裏側の恋人たち
スタッフさんたちからの生温かい視線に見送られ店を出て外階段で三階に上がる。

瑞紀の自宅の玄関ドアはキーレスの暗証番号式で私の着替えを置かせてもらうときに教えてもらっていた。だから半分眠っているような瑞紀を連れていても私が一人で玄関を解錠することが出来る。

「ほら、靴脱いで」
うんうんと半分寝ながら返事している酔っ払いを連れ、なんとか靴を脱がせて廊下を抜けて寝室に入った。

瑞紀は見たことないほど酔っていてよくここまで歩けたと感心したほど。
もう夢の中だ。
このまま寝かせてしまった方がいい。

よいしょ。
瑞紀の身体をベッドにごろんっと転がしてジャケットのボタンを外す。

「ジャケット脱いで」
ジャケットを脱がして靴下もぽいぽいと脱がせた。

「ベルト緩めるよ」
ズボンのベルトに手をかけてカチャカチャと外しついでに前も緩めた。

あー、このままじゃしわになるか。
脱がしちゃえ。

仕事で他人の着替えなど手慣れている私によって下着姿に剥かれた瑞紀。

泥酔して眠りの世界の住人になっている瑞紀はすーすーと気持ちよさそうに眠っている。

疲れたんだろうな。

絶対に失敗が許されないパーティーだった。
経験したことのない規模、そうそうたる参加者たち。
従業員の生活を背負っている瑞紀のプレッシャーは如何ばかりだったかと思うとこっちの胸まで痛くなる。

クミちゃんが応急処置をしてくれたけれど、自分の目で確認しないと気が済まない。
手早く右手の傷の確認をして持っていた湿潤被覆絆創膏で処置をした。
幸い傷はたいしたことない。
これなら数日で痛みは引くはずだ。

「よくがんばりました。おやすみ」

その身体にそっと掛け布団を掛けて寝室を出て施錠を確認し帰宅した。



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