裏側の恋人たち
ーーーー程よくアルコールのまわった身体に夜風が気持ちいい。
先週までは知らない街にいたから非日常だった。
けれど、こうしていつもの生活に戻り自分の精神状態が心配だったけれど、どうやら大丈夫そうだ。
こうして瑞紀と関わらない生活に慣れていくだろう。
瑞紀のことは自分なりにカタを付けたと思っている。
瑞紀には結婚の約束をしていた相手がいた。
おそらく同棲もしていた。
私にアイのコクハクをしてきたのは気の迷いだと思う。
何かの事情で離れて暮らしている間に瑞紀も男だから身体の方がさみしくなってしまったのだろう。
ヤツの入院中からぐいぐい迫ってたもんね、わたし。
ただ初めから婚約者がいるって言ってくれればよかったのにーーーと思うけど。
瑞紀がうちの病棟に入院してきて私と再会したときにちゃんと聞いたよ?何回か確認したよ?その度に「妻も恋人もいない」って言ったじゃない。だからしつこくしつこくアプローチしたのに。
それに瑞紀はあのコーディネーターの女性にも恋人も妻もいないと言っていた。
自宅のあの部屋の女ものの荷物だって意を決して聞いたら「家族のだ」って言っていた。もちろん鵜呑みにはしなかった。おそらく過去に同棲していた女性のものだろうくらいに思っていたのだ。
ほこりが積もっていたし、ベッドは木枠だけでマットレスすらなかった。その他の荷物は未練で捨てられないのかと思っていたのだけれど、捨てられないのではなく現在進行形の付き合いの女性のものだったから捨てるはずがない。置いてあったというわけだ。
ーーー結局、瑞紀もただの浮気男だった。
もげちゃえばいいのに。