裏側の恋人たち

引き続き今日は近場を回るBとCチームのミーティングに参加して本部に入った。


今日の本部はいつもと違い、二人きりではないので気が楽だ。

というのも今日は地方のテレビ局の取材が入るから、応援のスタッフが二人もいてくれる。
何となく先生と二人きりはイヤだなと思っていたからありがたい。
しかも、一人はわざわざ東京の総本山から来てくれた広報のプロ。

「メディアの方は10時にこちらに到着する予定と連絡ありました。健診の様子は明日撮影することにしたいそうです。ですので今日は本部の撮影と福岡先生のインタビュー、午後からCチームの訪問診療と健康相談の様子の撮影になります」

総本山の広報の女性スタッフ美原さんがテキパキと報告してくれる。
私は福岡先生の後ろで聞いているだけ。

「メディアスタッフは何人来るかわかる?」

「あちらは4名だそうです」

「検査結果の確認している時間帯だからパソコン画面とか撮られると困るんだけど、それも大丈夫だよね」

「もちろんです。個人情報ですから使用する写真などは事前にこちらで確認することを了承してもらっています」

福岡先生の問いにも即座に返事が返ってきてとても気持ちがいい。

パソコンを立ち上げ、まだ当分取材の人は来ないし、お茶でも淹れようとポットのスイッチを入れた。

美原さん、格好いいなあ。
たぶん同じくらいの年齢だと思うけど、スーツも似合うし、出来る女って感じ。

仮に私がスーツを着ても絶対にあんな風に似合わない。間違いない。
もし私がこの職業に就いていなかったら彼女のようになれただろうか、なんて夢みたいなことを考えてくすりと笑ってしまった。

「浜さん、ニヤニヤしてどうしたの?」
佐野くんが不思議そうな顔をする。

佐野くんは昨日一緒に行ったメンバーで大卒2年目、まだ24才。
でも、この子は結構お酒がいけるクチで。
例の件ですっかり懐かれてしまいお互いほぼタメ口だ。

「あ、見つかっちゃった?ごめんね、仕事中不謹慎で」
ペロリと舌を出す。
小さな声で言ったつもりだけど、福岡先生が驚いた顔をしてこちらを見ていた。

福岡先生の反応はとりあえずスルー。

「自分がオフィスで働く仕事に就いたとしても美原さんみたいにはなれなかっただろうなと納得してたの。頭の回転の速さとかスーツの着こなしとか全然無理ですもの。それを想像したらちょっとおかしくなっちゃって。私が本部の広報にいたら理事をしている水ちゃんのお兄さんにド叱られる未来しか見えないわー」

ふふっと笑うと
「そんなことないですよ。私がスクラブ白衣を着てもそんなに凜とした雰囲気になりませんから」
と美原さんがフォローしてくれる。

出来る女はフォローも完璧だわ。いや素晴らしい。

「でも、浜さんプライベート酒豪ですから。凜とした酒豪ですから」

ぽつりと呟いた佐野くんをひと睨みして黙らせる。
しかもなぜ二度言った。

「すんません、姐さん」
「それは言うなって言ったでしょ」
問答無用で足を踏んでやった。



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