離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
 柔らかな笑みを浮かべた彼女が優しいドイツ語で会話を続けてくれる。

「まぁ、ドイツ語がお上手ね」
「ありがとう。まだ勉強中ですが」
「どこから? 中国? 日本かしら?」
「日本人です。妻にプレゼントをと思って……」

 ショーケースに並ぶネックレスや指輪に視線を落としながら彼女に伝える。

「なにかの記念日?」

 そういうわけではないと言いかけたが、少し考えてから俺はうなずく。

(俺たちの夫婦としてのスタートだ。記念日に違いないだろう)

「それならペアウォッチはどう?」

 彼女は時計の並ぶ一角に俺を誘導する。そういえばこのブランドは時計から始まったと聞いたことがある。店としても自慢の品なのだろう。

(……時計か)

 魅力的な提案だと思った。美紅はジュエリーより実用的な時計のほうが喜んでくれそうな気がしたしなにより時計なら仕事中でも身につけることができる。職業柄、離れている日が多いからこそペアのものを身につけて互いを近くに感じられたら……。

「あまり華美なものでなく、ごくシンプルな商品を見せていただけますか」

 勤務中に使用するなら派手すぎるものはNGだ。
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