離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます～旦那様は政略妻への恋情を止められない～

　高校生くらいの頃、慶一郎おじさんの過保護ぶりがすさまじかったことを思い出す。男女数名で健全なグループデートをしたときも『絶対来ないで』と言ったのに彼は私を駅まで迎えに来てしまって大喧嘩に発展したのだ。

（私がモテないのって慶一郎おじさんのせいでもあったよね……）

　大きな恩のある彼にまた迷惑をかける結果になってしまうかもしれないのは心苦しい。でも、あのときパイロットの夢より私を選んでくれた慶一郎おじさんならきっとわかってくれると思った。

（家族が一緒に暮らすのは幸せなことだもの）

　仕事終わりの夜十時過ぎに私は慶一郎おじさんの家に帰った。

（あぁ、今日は疲れた。今夜は泊めてもらおうかな）

　桔平さんはたしか今夜は不在の予定だったはずだ。
　疲労と眠気でぼんやりしていた私の頭は玄関にある女性もののパンプスを見て一気に覚めた。

（えぇ、私が来るのをわかっていて女性がいるってことは……つまり慶一郎おじさんの恋人?）

「おつかれさま、美紅」
「こんばんは、美紅ちゃん」

　照れくさそうに私を出迎えた慶一郎おじさんの隣に寄り添っていたのは――。

「え～、茜子さん！」

　お気に入りの洋食店、春日楼の看板娘である茜子さんだった。
　私と慶一郎おじさんはダイニングに向かい合わせに座る。茜子さんは勝手知ったるキッチンという様子でお茶を準備してくれている。