離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
 自分自身も、なにより桔平さんが危険な状況にあると思うと足がすくむ。

(でも……しっかりしなきゃ! CAとして冷静に対応することがきっと桔平さんの助けになる)

 ある意味この便に乗務できていたことは幸運だった。地上で桔平さんの無事を祈るだけという状況のほうが何倍も苦しかったと思う。
 ガタガタと揺れるなか機体は東京第一空港に戻る準備に入った。まずは不要な燃料の投下だろうか。必要以上に積んでいると火災発生時の被害が大きくなってしまうため投下するのが原則だ。
 緊急着陸が必要となった機体はほかの機体より優先して着陸が許可される。今頃、桔平さんは管制官と連携してその調整も取っているはずだ。

 ガクンと、まるでジェットコースターのように機体が前のめりに降下し乗客から悲鳴があがった。

「や、やっぱりダメなんじゃない?」
「このまま墜落するのか?」
「やだやだ! 死にたくないよっ」

 仕方のないことだがあっという間にその場は阿鼻叫喚の地獄と化す。

「落ち着いて、席を立つのはお控えください」

 私たちの声もパニックになった彼らの耳には届かない。
 ふと、ひとりの乗客に私は目を留める。小学生か中学生くらいの女の子で同乗者はいないようだった。不安そうにギュッと目をつむって両手を組んでいる。

「ひとりで来たの?」

 私が声をかけると彼女は弾かれたように顔をあげた。
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