離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
「そうだな。ほら、パニック映画だと騒ぐやつほど生き残れないし!」

 若い男性も彼女に続く。賛同する声が輪になって広がっていった。
 乗客の間に強い絆のようなものが生まれ、互いに励まし合うことでパニック状態を脱することができた。

 乗客みんなの祈りを背負った桔平さんの操縦で機体は東京上空へと戻ってきた。

『これより当機は緊急着陸を行います』

 桔平さんのアナウンスに私たちの緊張感も高まる。
 着陸予定地には万が一に備えて数台の消防車も待機していた。

(あとはこの瞬間を乗りきれれば――)

 片側のエンジンのみとは思えない安定感で機体は降下し、ソフトランディングする。もちろん着陸時の衝撃は平常時よりは大きいが機体が火をあげることもなかった。

『――無事に緊急着陸に成功しました。お客さま全員が冷静に勇敢に、この危機に立ち向かってくださったおかげです。クルー一同、心より感謝申しあげます』

 乗客からヒーローへ拍手喝采が送られた。

(私の演説は桔平さんの耳には届いていないと思うけど、私たち同じような気持ちでいたんだな)

 安堵したら涙腺も緩んでしまったけれど慌ててそれを拭った。難局は乗りきっても、まだまだやることは山積みだ。乗客を無事に避難させ代替便の手配などに奔走しなくてはならない。

 機体をおりるお客さまを誘導していたら、さっきの中学生が私に駆け寄ってきて声をかけてくれた。
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