離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
 彼が私を引き取ってくれたのは三十三歳のとき。パイロットとしても躍進する時期だったし、結婚適齢期でもあったはず。彼は私のためにいろいろなものを犠牲にした。それは紛れもない事実でとても重い。

「ごちそうさまでした」

 食事を終えた私は顔の前で両手を合わせる。

「久しぶりに話せてうれしかった。午後もがんばろうね!」
「うん」

 私たちは席を立ち食器を返すためにカウンターに向かう。すると、食堂の入口付近で小さなざわめきが起きていた。

「なんだろ?」

 好奇心旺盛な夕菜が食器を片づけるなりそちらに足を向ける。私もあとを追った。

「あ……」

 みんなの視線を一身に集めていたのは大門コーパイだった。キリッとした濃紺のダブルスーツ、肩と袖には副操縦士であることを示す三本ライン。パイロットの制服が持つ機能美は彼の美貌をよりいっそう際立たせる。

(もはや神々しいくらい)

 夕菜がやや声をひそめてささやく。

「やっぱりどこか近寄りがたいよね。大門さんの場合、むしろ乗務中のほうが声をかけやすい感じ」

 パイロットは選ばれしエリート集団だけど案外気さくで親しみやすい人が多い。

『パイロットに一番大事なのは助け合いの精神だ。競争心が強すぎる人間、自分が一番偉いと思っているような人間は絶対に採用されない』
< 29 / 183 >

この作品をシェア

pagetop