雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。

「だけど、俺は暴走族の総長だから簡単に好きだなんて言葉にできなかった。そんな時、探してた姫候補に瑠佳の名前が上がったんだ」

「少しの間でいい。契約でも、期間限定でも側にいたかった。もちろん、櫻子のために姫を探していたの嘘じゃない」

「うん、わかってるよ」

「でも、瑠佳と過ごすうちに手放すなんて考えられなくなった。けど、気持ちを伝える前に狂猫と決着をつけるのが先だと思ったんだ」

初めて聞く怜央の本音に涙が溢れる。

雇われ姫の私はこのまま偽りの存在として終わっていくのだと思っていた。

「私だって、このまま怜央と離れるなんて考えられない。だって、怜央のことが、」

話し終える前に、怜央が私の口をキスで塞ぐ。

「それはもう一度、俺から言わせてくれ。好きだ、瑠佳」

だからってキスで言葉を遮るようなことしなくても。

そう言いたかったが、怜央から好きだと伝えられたことに胸がいっぱいでその言葉は呑み込んだ。

初キスの余韻に浸る時間すら与えられず、怜央は話を続ける。

「この先も瑠佳を護るって約束する。だから俺の側に、」

怜央の話を遮るように、今度は私が彼の唇にキスを落とす。

怜央ばかり自分の気持ちを伝えるのはずるい。私にだって言いたいことはある。

「さっき、言葉を遮られたから仕返し。私も怜央のことが好きだよ。甘え方も知らないし、可愛げもない女だけどこれからも怜央の側にいてもいい?」

「ああ、ずっと側にいろよ?この先も俺の姫は瑠佳しかいないんだから」

扉の向こうで皆が聞き耳を立てているなんて知らなかった私達は、もう一度静かに唇を重ねた──。

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