偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました

 秀の両親のスケジュールに合わせて挨拶は来週末に決まり、恋の父親は入院中のため病室でということになって、打ち合わせは終了した。

 恋はモヤモヤした不可思議な感情を払拭するべく、残っていた紅茶を一息に飲み干し、退席しようとしたのだが、思いがけず足止めを喰らうこととなってしまっている。

「じゃあ、また」
「はっ!? このまま帰るつもりなのか?」

 足元の床に置いていたバッグを手に取り立ち上がった恋のことを、慌てた様子の秀がガタンッと大きな音を立てて立ち上がり、すぐ傍まで駆け寄ってきた。

 ーー私、何かおかしなこと言ったかな? それとも、何か言い忘れたことでもあったとか?

 秀の慌てように、驚いた恋はポカンとしつつも、問い返す。

「うん。だって、話は終わったんだよね? それとも言い忘れたことでもあるの?」

 恋の問いに、一瞬、柄にもなく窮する様子を見せた秀だったが、俺様らしく、やけに強気な発言を繰り出してくる。

「否、そういう訳じゃないが。俺たち、偽りだとはいえ婚約者なんだぞ。話が終わったからって帰ったりしないだろ、普通」

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