偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました
そんな有り様では何かを返すような余裕なんてない。代わりにコクンと顎を引いて意思表示するのがやっとだった。
納得した恋に、秀は心底安堵したように、ふっと相好を崩すと、恋の手首をぐっと引き寄せ、間近から恋のことを甘やかに見つめてくる。
そうして、頬を愛おしそうに両の掌に包み込むと、優しくそうっと撫でながら、言い聞かせるように甘い声音で囁きかけてくる。
「だったら、もっと男である俺に慣れておく必要があるよな」
ーーほら、やっぱり。先走らなくてよかった。
胸の内では、そんな風に安堵しつつも、言いようのない虚しさを覚えていた。
そんな恋の心を慰めるかのように、彼は愛おしいものを愛でるかのような優しい手つきで、絶えず頬を撫で続ける。
ただそれだけのことなのに。こんなにも心地よく感じてしまうのも、不可解な感情のなせる技なのだろうか。
ーーだったら厄介だ。こんなの辛すぎる。
そう思っている傍からーー
あたかも恋は、妖艶な秀の姿に魅入られてしまったかのように身動ぎさえも叶わないだからどうしようもない。
夢現でほうっと見蕩れている間に、無防備な唇を優しく奪われてしまう。
酔っていたために記憶は朧気だけれど、初めて交わしたキス同様に、繊細な砂糖菓子のように甘美なものだった。