偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました
翌日の日曜日。恋の父はまだ入院中のため病室での挨拶となっていたのだが。
恋人がいたことのない恋にはこういうとき父にどう伝えればいいかわからず、「会わせたい人がいる」とだけ告げ事前説明もしていなかった。
結局のところ、父を騙すことへの罪悪感に苛まれ、肝心なことを言えずにいたのだ。
そのことを秀に木曜日の夜に話したところ。
「それなら俺が事前に話をつけておくから安心しろ」
やけに自信たっぷりに放たれた、頼もしい秀の言葉に、恋は不覚にも胸をときめかせた。
おそらく治療と称した、秀からの本物の婚約者のような激甘な扱いにより、身も心もすっかり慣らされてしまっているからだろう。
秀の治療が功を奏したのか、男性恐怖症は克服できたのかと思うくらい、あのキス以来何ともない。
おかげで、全力で気づかないフリを決め込んで、胸の奥底に仕舞い込んでいたはずの想いが、膨れに膨れ、何かの弾みで溢れ出してしまいそうだ。
ーーそれが怖くてどうしようもない。
恋はそんな危うさの中にいた。
そんな恋の心情など置き去りにして、時間は容赦なく過ぎていく。
そうして迎えた日曜日。
ネービーのクラシカルな三つ揃いのスーツを品良くパリッと着こなした秀と一緒に父の病室へと赴いたのだった。
ちなみに本日の恋の装いは、秀が用意してくれた、ふんわりと柔らかなフレアシルエットの、上品なアイボリーのワンピースだ。