偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました
これまでも、秀に本物の婚約者さながらに優しくされたり、やけに熱のこもった眼差しで見つめられるたび、本当に愛されているのではないかって、何度も勘違いしそうになった。
それを幾度となく打ち消してきたのだ。そう簡単に信じられるはずがない。
これはドッキリか何かだろうか。
喜んでいる一方で、待てよ、これには何か裏があるに違いない。
恋のことをその気にさせて、早く子供をもうけようとしての言動だろうか。
どうしても疑念が浮上してくる。
だって、ゲイだと言っていたし、それを本人もつい最近ーーあの夜までそう思い込んでいたと言っていたのだ。
そんなの信じられる訳がない。
当惑しきりの恋は、呆然と立ち尽くしたままポロポロと大粒の涙を零していた。
この涙が、嬉しいからなのか、困惑しているからなのか、もはやそれさえも、自分でもよくわからない。
そんな涙で滲んでしまった視界には、華やかな電飾で彩られたイルミネーションの光の粒がキラキラと瞬いている。
澄み渡った夜空に煌めく星の輝きのように。
それが徐々に白く濁って霞んでゆく。
いつしか立ち上がってきた秀の大きな手が頬を包み込む感触がした。
その冷たさにビクッと肩が跳ね上がる。
ーーさっきまであんなに温かかったのに、緊張してるせい?
そう思ったはずが、心とは裏腹に。
「そんなの、信じらんない」
恋の半開きになった唇からポロリとそんな言葉が零れ落ちていた。対して秀は。
「恋が男性恐怖症だってわかって、咄嗟に嘘をついてしまったんだ。いくら怖がらせたくなかったとはいえ、騙すようなことして悪かったと思ってる。ちゃんと説明するから聞いてほしい」
苦しそうに整った相貌を歪ませゆっくりと言葉を慎重に選ぶようにして低い声音を震わせた。