【電子書籍化】独身貴族になりたいんです!〜毒姉回避のために偽装婚約を結んだ人形令嬢は、エリート騎士に溺愛される〜

5.利害の一致

「ラルカ嬢、僕と婚約しましょう」


 銀髪の騎士がラルカを見つめる。
 思いがけない言葉に、彼女は小さく息を呑んだ。


「結婚したくないのでしょう?」


 彼の言葉はそんな風に続いた。ラルカは目を見開き、騎士をまじまじと見つめる。


「――――貴方と婚約すれば、わたくしの願いは叶うのですか?」


 まるで絶望の中に見出した一筋の光のよう。
 男は微笑みを浮かべ、コクリと力強く頷く。


「実は僕も、親から婚約を急かされているんです。早く身を固めなさい。結婚して一人前になりなさい、と。
だけど、どうにも気乗りしなくて。今日までのらりくらりと逃げてまいりました。
しかし、両親はこれから先も、僕が婚約をするまでの間、しつこく結婚を勧め続けるでしょう。
ですから、貴女にまだ結婚をする気がないなら丁度いい。僕と婚約を結びましょう。そうすれば、互いにうるさい親族から逃れられます。
いつ籍を入れるか、実際に結婚するかどうかは、僕ら次第。タイミングを最大限まで引き伸ばしてしまえば良いと思います」


 騎士の言葉に、ラルカの胸が大きく打ち震える。期待と興奮で、今にも飛び上がりそうだ。


< 18 / 219 >

この作品をシェア

pagetop