【電子書籍化】独身貴族になりたいんです!〜毒姉回避のために偽装婚約を結んだ人形令嬢は、エリート騎士に溺愛される〜
(嘘みたい! こんな風に言ってくださる方がいるなんて……!)


 正直ラルカは、半分以上諦めていた。姉の言うことを聞く以外の道はなく、また結婚を先延ばしにしてくれるような人がいるとは思っていなかった。

 騎士の表情は真剣で、決して嘘を吐いているようには見えない。
 ラルカはそっと身を乗り出した。


「本当に……本当によろしいのでしょうか⁉ わたくし、本気でしばらく結婚する気はないのです。まだまだエルミラ様のもとで仕事を続けていたいのですが……!」

「もちろん。寧ろ、僕は活き活きと仕事をする貴女が――――――いえ。
僕の両親は、働く女性に寛容で、寧ろ好意的です。無理矢理、式を急かされることもないと思います。
あとはどこまで婚約を引き伸ばすか、引き伸ばせるか、といったところでしょうか?
これについては具体的なお約束はできませんが、短くて一年、長くて数年の猶予ができるでしょうし、少なくとも、僕の方から急かすようなことはありません。両親のことも、全力で止めてみせます。他の、結婚に乗り気な男性と婚約するよりはマシではないでしょうか?」


 騎士はそう言って優しく微笑む。
 ラルカはとても嬉しかった。嬉しすぎて、涙が出そうなほど。

 けれどまだ、彼に確認せねばならないことがある。
 ラルカはほんのりと表情を曇らせた。


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