ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
第2話 11月5日
結局、夜が明けても和泉から返事はなかった。
身支度と朝食を済ませた小春は、いつも通りの時間に家を出る。
昨日言っていた通り、門前で蓮が待っていた。
「おはよ」
「ん? おー、おはよ」
蓮は何やらスマホと睨めっこ状態だった。学校へ向かいつつ、小春はその理由を尋ねる。
「何見てるの?」
「いや、何っつーか……」
何処か険しい表情でスマホをポケットにしまうと、その調子のまま答えた。
「他県の高校行った友だちなんだけどさ、何かずっと返信返って来ねぇんだよな」
嫌われちゃったんじゃない? などと小春は冗談めかしてからかおうとしたが、神妙な蓮の様子に憚られた。
「……どのくらい前から?」
「一、二か月前が最後だな。十一月に東京来るっつってたから、飯でも行こうって約束したのに」
それならば、どうやら嫌われたという可能性は希薄と言えそうだ。
和泉の音信不通とも関係があるのだろうか。一概にはどちらとも言えない気がする。
和泉については、今日は来ているという可能性もある。だとしても────。
「何か物騒だね、世の中……」
「……そうだな」
これほど周囲で消息不明者が出るとは、やはり何事かが起きているのではないだろうか。
小春は鞄を肩に掛け直し「そういえば」と口を開く。
「昨日ね、何か変なメッセージが来たの」
「変な? 誰から?」
ちょっと待ってね、とスマホを取り出す。
そのまま画面を見せようとしたが、不意に注釈を思い出し踏みとどまった。
“トーク画面及び本アプリの画面を他者と共有した場合、ペナルティが与えられます”
何てことはない、ただのゲームだ、そう思うのに軽々しく無視出来なかったのは、このゲームの持つ異様な雰囲気に飲み込まれているからかもしれない。
「……ウィザードゲームって、知ってる?」
小春は結局スマホをポケットに戻しつつ尋ねた。
ぴた、と蓮の足が止まる。
訝しげに首を傾げると、蓮の顔色が悪くなっていることに気が付いた。
「嘘だろ……」