ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜
小春は小さく笑った。
「忘れても蓮が教えてくれるんでしょ」
思いがけず驚くも、頷いた蓮は笑い返す。
本当に彼女が戻ってきたことを深く実感する。
「おう、何百回でも教えてやるよ。忘れてたことを忘れるくらいな」
小春はさらに笑う。
彼がいてくれてよかった。
────けれど、実際問題どうしたものだろう。
この状態ではとても家には帰れない。
至もいなくなってしまった上、冬真たちにも場所が割れてしまい、あの廃屋に戻ることもできない。
どこを生活の拠点にしたらいいのだろう。
そのとき、小春のスマホが鳴った。
紅からの着信だった。
「もしもし、紅ちゃん?」
『ああ、突然すまないな。水無瀬氏、きみは記憶喪失なのだとか』
紅は相変わらずの古風な語り口で切り出す。
「あ、うん……。そうなの」
『色々と困りごとがあるのではないか? たとえば、住む場所とか』
「それは────」
『わたしは学校近くのマンションでひとり暮らししている。特別なもてなしはできないが、もし困っているなら来ても構わないぞ』
驚いたり感謝したりする隙もなく、一方的に切られてしまった。
間を置かずして住所が送られてくる。
【心配するな、寝巻きなら貸すぞ】
小春は蓮と顔を見合わせた。
思わぬ申し出だったけれど、この上なくありがたいものだ。
遠慮なく彼女の厚意に甘えさせてもらうことにした。
────日用品だけコンビニで調達したところ、今度は蓮の方に紅からメッセージが届いた。
【向井氏に貸せる分はないから、きみは自分のを持ってきてくれ】
蓮は驚いたように瞬く。
「え? 俺もいいのかよ」
呟きながらそう送った。
【当然だ。水無瀬氏のそばにいると言ったのだろ?】
【記憶を失ったら自分がすべて教えてやる、と。独りにしない、と】
【向井氏がそう息巻いた記憶を確かに見たが】
立て続けに送られてきた。
“見た”というのは、大雅から転送された記憶のことだろう。
蓮は思わず口元を手で覆った。
(バレてんのかよ、恥ず……。まあ、ほぼ全員の前で宣言したんだから変わんねぇか)
記憶を転送されていようがいまいが、あれは仲間たちに見聞きされている。
【分かったよ、ありがとな】
一旦、荷物を取りに自宅へ戻ると門前で足を止める。
「寒いだろ? 中で待ってろよ」
「いいよ、家の人に悪いからここで」
ドアに手をかけて促したものの、彼女は首を左右に振った。
「分かった。すぐ戻るから」
────宣言通り一瞬で支度を済ませて外へ飛び出した蓮は、目を疑った。
待っていたはずの小春の姿がない。
慌てて道路に出ると、ぽつんと佇む人影が目に入る。
「小春……」