ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜
はら、と一枚の羽根が舞い落ちていく。
羽ばたいても身体に負荷はなく、あくまで補助的な役割を持つものなのだろう。
ふと下を向けば、みんなの姿が小さくなっていた。
何だか怖くなってきて、慌てて高度を下げると素早く降下していく。
途中で羽根は消えてしまった。
とっ、とつま先から軽く着地すると、蓮が息をつく。
「……ったく、どこまで行くんだよ。落ちたらどうすんだ」
「それより誰かに見られる心配をするべきだろ」
「あ、ごめん。気をつけなきゃ」
「それにしても、羽根が生えるなんて幻想的ね」
「びっくりしたよ。勝手に生えたり消えたりするの」
「高度が関係あるのかもしれないな。ここから見た限りだが、10メートルが境界という説が濃い」
そんなに高いところを浮遊していたのか、と空を見上げて驚いた。
『羽根まで生えるなんていいなぁ』
「でも、何らかの制約がありそうね。ずっと上空に留まられると、ほとんど手出しできないから」
“ゲームバランス”という観点から、運営側が何らかの調整を行っている可能性は高い。
色々試して確かめたいところだけれど、いまはあまりに目立ってしまう。
『何はともあれ、ひとまずは安心できそうだね』
「もし魔術師の襲撃に遭っても空中に逃げ込めるし、飛行すればそのまま撒ける。工夫次第では攻撃にも転じられるかもしれないな」
奏汰と慧が言う。
小春は自身の能力を、盾でなく矛として使うときが来ないことを切に願った。
◇
ひと足先に屋上から戻った琴音は、他クラスから出てきた瑠奈を捕まえた。
「ちょっといい?」
瑠奈は最大限の警戒心を剥き出しに、少し怯えつつそのあとを追う。
琴音は中庭で立ち止まった。
中央にある広葉樹を取り囲むように、カラーコーンが置かれている。
和泉の石化死体が発見された位置だろう。
「な、何の用……?」
「ここ数日、大人しくしてたのは賢明ね。敵わないと悟ったの?」
琴音の冷ややかな眼差しに気圧され、瑠奈は何も言えなかった。
「もう分かってるだろうけど、あえて言うわ。わたしは魔術師よ。あなた風に言えば“魔法少女”かしら」