溺愛執事と極上生活
「だって執事を決める際、将来を見据えなきゃなんないでしょ?」

「え?しょ、将来…ですか?」


そう。
執事とは、24時間365日常に行動を共にする。
更に将来もずっと一緒に過ごし、中には結婚し夫婦になる者もいる。

そのくらい、深い関係なのだ。

「ですから執事の方も、安易に私達と契約したりなさらないのよ」

「“ある意味”お互い、婚約者を見つけるようなものですもんね……!」


どんな人なんだろう━━━━━━━

“名高”と聞くだけで、クラスメート達は顔を赤らめていた。

(ちゃんと、写真を見ておくんだったな(笑))


廊下をゆっくり歩いていると、生徒達の声が聞こえてきた。

「名高様よぉー」
「キャー!!素敵ぃー!」

その声を聞き、慌てて声の方を探る。

すると窓の外を、名高が他の執事の仲間達と歩いていた。

「わ……/////」
(か、カッコいい…/////)

つい、見惚れてしまう。

あっという間に、風葉の心は奪われたのだ。

完全に心が奪われ、見入っていると……
不意に、名高がこちらを向いた。

バチッと目が合う。
「え……/////」

すると……名高はふわっと微笑み、小さく会釈してきた。

風葉も慌てて頭を下げ、パタパタと去る。




「おい、あれ…って……」
名高の隣にいた仲間が言う。

「芥田神家のご令嬢、風葉様だ」

「あー!あの方が!
確か、執事いないんだよな?」

「あぁ」

「俺を選んでくんないかな~」
「は?」

「おいおい…毅登、そんな怒んなよ…」
「………」

「でも、なんでだろうな。
芥田神家となりゃあ、執事がいて当たり前なのに」

「そうだな。
もどかしいな……」
「ん?」

「俺達は“こちらから”執事になることはできないから………」


毅登の呟きが、風に乗って消えた。

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