溺愛執事と極上生活
その日の夜。

自室にて風葉は、喜一郎に渡された執事候補の写真を見ていた。
「確か……名高さん…名高さん……あ!あった!」

名高 毅登。
23歳。
執事の中でもトップクラスの成績で、毅登に仕えてほしいという令嬢が後を絶たない。

なので使用人ながら、毅登は高貴な人間として扱われている。
学生が“名高様”と呼ぶのは、そのためだ。

更に眉目秀麗、文武両道。
これ程ない、ハイスペックな男性である。


「へぇー、こんな人だったらいいかも?」

「では、すぐに手配しましょうか?」

「へ!?
み、美間さん!!?」
「申し訳ありません。
何度もお声をかけたのですが……」

そこには、紅茶を持った美間が立っていた。

「あ、いえ…」
「こちらは……あー、名高さんですね。
では、手配を━━━━━━」
「あ!け、結構です!!」

「え?どうしてですか?」
「だ、だって、名高さんはなかなか執事を受けないって。
たぶん、お仕えしたい人がいるんじゃないでしょうか?
芥田神家の依頼なら、無理して受けることになるんじゃないですかね?
そんなご迷惑かけたくないです……」

「そんなことは……」
「と、とにかく!
結構ですので!
私は、一人で大丈夫です!」

「………」
美間は、少し不本意に頷いた。




そして、星鈴川学園に通いだして一週間が経った━━━━━

最近の風葉の昼休みの過ごし方は…………
「よいしょっと!」

校舎から少し外れた木陰。
そこに小さなレジャーシートを敷き、座る風葉。

そこで芥田神家のシェフが作った弁当を食べながら、小説を読む。

とても穏やかで、心地よい時間だ。

お陰様で友人は沢山できたのだが、彼女達は昼休みは各執事と過ごすため、風葉は邪魔になるのだ。

風葉がいると、友人達の執事が風葉の世話もしなければならなくなる。
(風葉が断っても“芥田神様の手を煩わすわけにはいかない”と言われるから)


「うーーーん!
気持ちいい~!
…………眠くなってきたな…」
弁当を食べ、小説を読み終えた風葉。
おもいきり伸びをして、あくびをする。

「………
……5分、だけ……」
そのまま、うたた寝してしまった。

「……スー、スー……」
心地よい風が、風葉の柔らかい髪の毛を揺らす。

そこに、カサッカサッ…とゆっくり向かってくる足音が聞こえてきた。

「フフ…可愛い…」
その人物はジャケットを脱ぎ、風葉に優しくかける。
そして風葉の前髪を優しく払い、額にキスをした。


「明日から、よろしくお願いしますね。
俺の………俺だけの風葉様……!」
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