こじれた俺の愛し方
「…テイキさんには悪くて言えなかったんです…こんなことで迷惑をかけるなんて…。でも私、結局テイキさんに迷惑を…」

 今まで向こうに連れ去られなかっただけまだいい。
 しかし警察に通報できなかったナツは、俺にも何も言わなかった。

 俺は肝心なときにナツのそばにいてやれなかった。

 ナツが意を決して自分の家を飛び出し俺のもとに来るまで、俺は何も知らなかった。
 こんな、二週間ほどもナツは苦しんで…

 …俺が、ナツを追い出してしまったせい…。
 だから前に家に連れ込んだときにナツは俺に、『助けて』と言ったんだ。
 あんなことをしなければ、もっと早くナツは俺を頼ってくれただろうか…?

「…ごめんな…」

 俺はナツを抱きしめる。
 ナツは俺の胸の中で首を横に振った。

「っ、テイキさんのせいじゃないです…!」

 他の人間なんか、どうでもいい。
 こんなに他人のことを信じて生きてこなかった自分だけれど、ナツにだけは俺のことを信じてほしいと思った。

「…ナツ、その男はいつも何時頃に来るんだ?」

 俺が尋ねると、ナツは俺の考えがすぐにわかったらしい。
 間をおいて小さく頷くと、男がいつも家に来ていた時間を俺に教える。

 これが最良の策かは分からないが、たくさんのことがナツにのしかかり二週間だ。これ以上何も手を打たないわけにいかない。

 それにナツは、その男は自分を家に閉じ込めようとしたと言っていた。
 要するに、俺も同じ過ちを犯すところだったということ。その償いをナツにするためでもある。

「…ナツ、行けるか?」

 俺の言葉にナツは少し顔をつらそうに歪めてから、小さく「はい」と返事をした。
< 34 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop