こじれた俺の愛し方

混乱と恐れに呑まれて

 次の日ようやく落ち着いたナツは、自分に何があったのかを俺にゆっくりと打ち明け始めた。


 ナツが他の男と歩いていた日から数日後、学校からの帰り道で叔父だと名乗る男が近付いてきたという。
 ナツの両親は亡く、生前にも近い親戚は近辺にいないと聞いていた。

 その男はナツとナツの両親の名を言い当て、自分は母方にあたる親戚で、ナツの叔父だと名乗ったという。

「…歳は…五十代くらいかもしれない…。それで毎日毎日、自分の部下だっていう人と家の近くに来るんです…。一緒に暮らさないか、真剣に考えてほしい、って…」

 もう成人になるナツと暮らしたいなんて、それを聞いただけでは本当に下心しか見えてはこない。

「その人、私と同じで近い身寄りがないのにずっと病気だったらしくて…。運営していた会社も別の人が代理で最近までやっていた、って言っていました」

 家にあるアルバムや両親の手紙を掻き集めて調べても、毎日家に押しかける男のことなど書かれていなかったという。

 真実はもう知ることが出来ない。
 いくら相手が親戚と名乗ろうと、ナツにとってはただの見知らぬ他人でしかない。

 しかしとうとう家にまでやってきたその男への恐怖のため外に出ることも出来ず、学校に数日休むと連絡をして家に閉じこもっていたらしい。

 その男は自分の家を知っている。
 他に何を知っているか分からない。学校の場所や、俺と付き合っていることも知っているかもしれない…と。

「…何度も断ったんです…だって、本当に私の叔父さんなのか分からないから怖くて…!警察に言おうかとも思った。でも、直接の被害もないのに…」

 ナツは泣きそうになりながら下を向いた。
< 33 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop