君と私の秘密
その後、俺らはワイワイとお喋りをしながら昼飯を終えた。

俺は、昼飯の時に色々教えて貰った。

さっきいた場所が食堂という名で飯を食うところなんだと。

んで、俺を起こした男が真樹という名前らしい。

席を取ろうと言い出したのが、秋羅。

いつも葵葉の隣にいる女が咲恵。

そして、真樹というやつに最後に言われた言葉…。

「今日から俺たち友達な!」

友達…か。

正直友達なんて作るつもりはなかった。

なんなら要らねぇ。

けどまぁ、何かあればこいつらを使うことが出来るかもしれないと、俺はそう思い、

分かった。

そう伝え友達になった。

これから先こいつらと関わることなんてほとどないだろうけどな。

さてと…。

昼飯も食ったしデザートといきますか。

俺はさっさと席を離れ簡単に着いてきそうな女を探した。

うーんと…お、あいつにすっか。

廊下の隅で携帯をいじっていた少しギャルっぽい女に声をかけた。

「ねぇねぇ、君!今空いてる?俺さ、今日転校してきたばっかりで校内全然わかないから教えてくれない?」

ニコッと微笑めば女は頬を真っ赤にし、

「いいよ!零斗くんだよね!」

あん?なんでこいつ名前知ってんだよ。

「私、同じクラスの前野莉奈っていうの!よろしくね!」

あーなるほど。同じクラスの女だったか。

「よろしく。」

またニッコリと微笑むと女の頬がさらに赤くなる。

「……で、ここが理科室!これで全部かな!」

「うん。ありがとう。じゃぁさ、その中で1番人が来ない場所ってどこかな?」

「えっと…三階の資料室かな。あそこは、放課後に先生達が使うぐらいなんだよね。」

「そうなんだ。ありがとう。その資料室にさ、一緒に行かない?まだ、時間あるし2人でお喋りしようよ。ダメかな?」

「……いいよ!いく!」

ちょろいな。

ちょっと紳士的に優しく声をかけりゃ着いてくるとか、ちょろすぎたろ。

-ガラガラガラ-

「え?鍵は?」

「あー掛かってないんだよね。なんか結構前に誰かが鍵を無くしたらしくて。」

いや、作り直すだろ普通。

「作り直さないの?」

「お金ないんだって。」

くすっと女は笑った。

まてまて、笑いごとか?

この学校とやらはどんだけ金ねぇんだよ。

てかよ、それならそれで違うものでもつけとけよ。

なんつー無用心な。

俺は呆れながらも中に入り、戸を閉めた。

「ねぇねぇ、零斗君!何話す?」

「んー何話そっかな。」

焦らしながら奥へと進む。

資料室の奥の隅…ここなら。

この場所ならじっくりとデザートを味わえそうだ。

さてと、満足させてくれよ?莉奈さん。

俺はニヤッと笑った。

「莉奈…。」

手首を掴み壁に押し付けた。

「え、ちょ、なに!?零斗君!?」

女はあからさまに動揺していた。

そして、俺は再び甘く囁く。

「莉奈、いいでしょ?楽しいことしよ?優しく扱ってあげるからさ。」

嫌がる、あるいはビンタされるかと覚悟はしていた。

が、この女は予想外な反応だった。

「い、いいよ。私、零斗君に何されてもいい。」

へー。俺になら…ね。

軽い女。

「ありがとう」

いただきます…。

「はンン……んん…。」

かぷりと首に噛み付いてやった。

「いった!?零斗君!?」

「大人しくしてよ。」

「ん!れい…と…くん。」

チュッ

「んん…はぁ…はンン…」

いつもと変わらない血の味。

美味くも不味くもない普通の血。

乾ききっていた喉が潤ってく。

最高。

ちらっと時計を見る。

そろそろ時間だな。

「莉奈。ありがとう。休み時間終わるから戻ろうか。」

「う…ん。また、こうやって零斗くんと楽しいことできるかな?」

「うん。また今度ね。」

また今度。

そんなものはない。

魔界でのルールの中の一つ。

同じ人間の血を吸ってはいけない。

だからもう、こいつと関わることは二度とない。

この日から昼飯のあとは必ずデザートと称した吸血をするようになった。

昼飯は真樹が毎日律儀に迎えにきやがるから仕方なく一緒に食べている。

あいつらにはバレないように、

昼寝すると言い輪から抜けている。

そして、資料室に女を取っかえ引っ変え連れ込みデザートを楽しんでいる。

それが終われば午後の授業。

それは全て寝る。

放課後になれば真樹がいつもの様にやってくる。

「一緒に帰ろうぜ!」

「ごめん。無理。バイト。」

「今日もかよ!?ま、しゃねぇーな!またな!」

「あぁ。」

いつもの会話。いつもの風景だ。

バイトがあるのは事実だし距離をとるにはちょうど良かった。

人間界ではお金というものがないと暮らしていけなきらしい。

そのため、人間界に来た俺は直ぐに働き口を探した。

こっちの世界には家族はいない。

だから、生きていくために仕方の無いことなのだ。

今日も、バイト先で働く。

どんな客にも笑顔で愛想良く。

これもいつもの風景。

何も変わらない。

こんな日々がきっと暫くは続くんだろうな。

誰にもバレずに上手く過ごして何事も無かったかのように、

初めから存在しなかったかのように、

俺はいつかこの世界から消え、魔界に帰るんだ。

さて、明日はどの女の血を頂こうかな?

ははっ、楽しみだ。

なーんて、この時の俺は呑気なことを考えていた。

俺は知らなかった。

俺の行動を怪しんでるやつがいることを。

そして、そいつと俺がどうなってしまうのかも。

何も知らなかった。








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