冷徹官僚は高まる激愛を抑えきれない~独占欲で迫られ懐妊いたしました~
目を覚ますと、目の前に直利さんの顔があった。
「由卯奈……! よかった」
がばりと抱きすくめられて、状況が把握できない。視線だけで辺りをうかがう……「病院?」そうつぶやいた私に、少し身体を離して直利さんがうなずいた。
どうやら病院の個室にいるようだった。
豪華な家具やしつらえは病室らしくないけれど、点滴が繋がっているし、ナースコールのボタンもある。
「そうだ。いきなり倒れて──」
直利さんがそこまで言ったとき、コンコンと部屋がノックされる。入ってきたのは、少し年上くらいの女性医師だった。
「あら、お目覚めになられたんですね」
「先生、由卯奈は……」
慌てたような直利さんに、医師がわずかに苦笑した。その表情に、きっと私が軽症も軽症なのだと気がつく。おそらくちょっとした貧血だとか、そんなものだったのだろう。
「あの、直利さん、私……」
大丈夫ですよ、と言いかけた言葉を医師が遮る。
「芳賀様。さきほど行いました血液検査の結果から、申し訳ありませんが、ひとつ診察したい項目がありますので奥様をお連れしてもよろしいでしょうか」
「……っ、なにか、病気なのですか」
これでもかと不安が混じる声で彼は言う。……どうしてそんなに心配してるの?
私はどこか他人ごとのように彼と医師を交互に見つめた。
「病気というか……産婦人科です」
ぴくっと直利さんの肩が揺れる。私の手を握る彼の硬い指先に力がこもった。
「こちらが血液検査の結果です。こちらをご覧いただけますか? HCGという項目があるのですが、ここの数値が」
「つまり、どういうことですか」
焦れたように言う直利さんに、医師はやわらかく微笑んだ。
「奥様、妊娠されていると思いますよ」
「……!」
私は身体をすくませる。
妊娠……だなんて、直利さんにとっては今聞きたくない言葉に違いない。
私はそっとお腹に手をあてる。
赤ちゃんがいる……。