crass
私は、ドキドキしていた。
「何か、忘れものですか?」

蒼輔さんがゆっくり近づいてきて
静かに見つめあってしまった。

このまま見つめあったら…
ダメな気がする。

「彼女に刺されるのは、嫌です。」

「だから、刺されないって。」

…これからキスをしようと
しているのに?
なんて本当のこと、言えない。

ゆっくり、蒼輔さんに背を向けて
取り出した鍵を鍵穴に刺して
ゆっくり、ドアを開けた。

「刺されないように、
…してもらえますか?」

私はドアを少し拡げて、蒼輔さんの
入れるスペースを作った。

蒼輔さんがこの部屋に来るのは
初めてだった。

別れてから、私は引っ越したから。
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