実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

実は白い結婚でしたの



「フィアーナ・レインワーズ! 貴様との婚約は破棄する!!」
「え……? フィアーナ?」

 王立学園の卒業式。そこで、唐突に言い渡された婚約破棄。

「聖女への度重なる嫌がらせ……。さらには毒殺未遂まで。これ以上は我慢の限界だ!」
「え? 私はそんなことしておりません……」

 目の前で私のことを見下ろしている人には、見覚えがある。
 私の婚約者だったのだから、当然だけれど、そうではなく。

(乙女ゲームのメインヒーロー……。それにこの場面、エンディング直前の断罪シーン!?)

 状況が呑み込めないまま周囲を見回すけれど、残念ながら誰一人私のことを助けてくれようとする人はいないようだ。
 事実無根の罪を並べ立てられた私は、弁解の余地もなく、年老いた辺境伯の後妻になることが言い渡されたのだった。

「ま、まさか私が、悪役令嬢フィアーナだなんて!?」

 王族の命令は絶対だ。その事実を受け入れる時間もないまま、私は辺境に嫁ぐことになった。
 悪役令嬢なのに、断罪直後にそのことを思い出しても、何の得もないと思う。

 王太子とヒロインの好感度は、それほど高くないらしい。
 悪役令嬢が、五十歳年上の辺境伯に嫁ぐ、というのはノーマルエンドだ。
 ハッピーエンドだったら、塔に幽閉されてしまい、バッドエンドでは襲ってきた竜の餌食にされてしまう。

 つまり、五十歳年上の辺境伯との婚姻は、知っている中で、一番ましな追放先だった。

 ***

(――――あれから三年。私は、大人になった。……と思うのよね?)

 墓前に供えたのは、夫だった辺境伯の最愛の奥様が大好きだったという、マーガレットの花束だ。
 正直いって、ずっとそばにいてくれた家族がいなくなって、悲しくて仕方がない。
 それでも、彼は最期まで笑顔で、私の幸せを願ってくれたから……。
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