実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
「好きです……」
素直に告げたその言葉は、ストンと私の心にあった隙間を埋めてしまう。
「レザール様のことが、忘れられなくて」
「え……?」
暗闇に慣れてきた目に映るのは、驚いたように見開かれた淡い水色の瞳だ。
気がつけば、ちょっとした小物にも、この色合いが多くなってしまった。
初めて目にしたあの日から、一番大好きな色だ。
「一人でいても、他の人といても、どんなに遠く離れていたって、忘れられなくて……」
「それは……」
「もう一度言わないと、分かってもらえないですか?」
不意に緩んだ腕の力。
そのまま私の髪を滑り降りてきた手が、耳元をかすめて頬に触れる。
「俺こそ、四六時中あなたのことばかり……」
そっと閉じた瞳。言葉の続きの代わり唇に落ちてきたのは、柔らかくて温かい感触。
「レザールきゅ……」
触れただけの唇が離れて、名前を呼ぼうとしたときに、もう一度深く口づけられる。
真っ暗な夜。世界に二人だけになってしまったみたいに感じたけれど、なぜか寂しいとは少しも思わなかった。