二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
「お世話?君が?香澄の?」

 涼は、拓人に似合わない言葉が拓人から出てきたことに驚き、鼻で笑いながらこう言った。
 
「世話なら僕がするから」

 君こそさっさと帰りなよ、と涼は言おうとした。だが、拓人はバッサリと涼を言葉で斬った。

「できるわけないでしょう。生まれてこの方、ちゃんとした家事なんかしたことないくせに」
「それはたっくんもだろ」
「お生憎様。私はちゃんと料理教室に通ったから和食、フレンチ、イタリアンなんでも作れるわよ」
「…………君が?」
「ええそうよ。料理ができる男って、最近キャラクターとしても人気なのよ。リアルを追求するためには、自分もできるようにならないとね」

 そう言うなり、拓人は涼を押し退けて香澄の家の中に入ろうとするので、涼は道を塞いだ。

「ちょっと。どきなさいよ」
「どかない」
「じゃあ聞かせなさいよ。家事のほとんどを人任せにし続けてきたあんたが、どうやって香澄の世話をするのかを」
「僕だって家事くらいできるさ。現に今だって」
「風呂なしアパートでのお試し生活だけで身につけた程度の家事スキルで、香澄のお世話ができるなんて、本気で思ってるんじゃないでしょうね」

 拓人はそう言いながら、涼の下半身を指差した。

「あんたの下半身のせいで、香澄は普通の体じゃなくなったのよ。どれだけケアしてもケアしても足りない程、今の香澄は繊細に扱わないといけないのよ」

 涼は、残念ながら拓人に反論できる材料を持ち合わせていなかった。

「それは、君も同じだろう」
「お生憎様。私はあんたと違って、香澄が本当に必要なものが何かを知っているし、聞き出せるわ」

 拓人はそう言うと、今度は耳元で涼をあざけるようにこう言った。

「たった一夜、ベッドで香澄を悦ばせたからって、あの子を自分のもののように扱うのはやめてよね。あの子に、本当の意味で目をつけていたのは私なんだから。ずーっとね」
「そういう君は、香澄とベッドを共にしたことはないだろう?」

(もししていたとしたら、今すぐ拓人の綺麗な顔をぐちゃぐちゃにしてしまったかもしれないが)

「くだらない考えしかできないところが、兄貴の最大の欠点ね。そして、あなたが香澄にふさわしくない理由にもなるわ」
「僕が、香澄にふさわしくない……?」
「あら、そんなことを教えてあげないといけないほど、あなたのご自慢の頭は鈍くなったのかしら?」

 拓人はそう言い切ると「仕方がないわね……」と言いながら涼ごと玄関の中に入り込み、ドアに鍵をかけた。

「勝手に入らないでくれないか」
「だから、この家はあんたじゃなくて香澄の家でしょうが。……あんた、本当に気づかなかったの?」
「何が」

 涼の返答に、拓人はため息をつきながらこう言った。

「私たちをチラチラと歩行者が見ていたのよ。おそらくあんたを見ていたんだと思うけど」

(気づかなかった……)

 その事実もまた、涼を驚かせた。
 普段だったら、自分こそが真っ先に気づくはずだったから。

「どちらにしても、あんたのせいで香澄がこれ以上傷つくのは見ていられない。あんたが理解するまで何度でも言ってあげる。あんたの失敗は私がちゃんとカバーしてあげるから、もうこれ以上香澄に近づかないで」

(失敗……?)

 拓人のこの言葉に、涼の中で押さえていた何かが切れそうになった。
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