二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
 香澄の家の玄関を、涼は我が物顔で開けた。
 盛大なため息をつきながら。

「何よ、その汚物でも見たような顔は。失礼しちゃう」
「それはこちらのセリフだよ……たっくん。どうしてここが分かったのかな」
「あんたにできることが、私にできないと思ってるの?」

 拓人は、つい数時間前に涼から言われた言葉をそのままそっくり返しながら、自分のスマホを見せた。GPSだった。

「こういう時だけは考えてしまうよ。残念だけど君とは血が繋がってるってことをね」
「残念なのはこっちの方よ。それより」

 拓人はもう2歩、涼に近づいてから、涼の襟元を思いっきり掴んだ。

「……香水臭いよ、たっくん」
「ここが香澄の家なんでしょう?」
「…………その証拠は」

 女の一人暮らしというのもあるのだろう。
 小森という表札はなかった。

「他人なんか同じ生物とも思っていないあんたが、他人の家に、あんたが同じ場所に1時間以上いることが立派な証拠でしょうが」

 涼は、笑顔で誤魔化しながら、拓人の足元に転がっているスーツケースに目をやった。

「その荷物は?」
「ん?お泊まり道具よ」
「誰の?」
「私の」
「どこに?」
「ここに決まってるでしょ!!」
「寝言は寝て言ってね」
「寝言なわけないでしょうが!」

 拓人は涼の襟元から手を離すと、今度は涼の顔に向けて指差しながらこう宣言した。

「香澄の妊娠中の世話は、私がするわ。あんたなんかお呼びでないのよ。あんたの家は今すぐ返してあげるから、とっとと帰んなさい!」 
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