二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
「香澄、どうし……!?」

 香澄は、涼の言葉を遮るかのように涼に抱きついてきた。
 泣きじゃくりながら。
 
「お父さん!ごめんなさい!」
「香澄……!?」

 涼は、香澄に言うべきか悩んだ。
 自分は香澄の父親ではないよ。
 君の子供の父親で、君の夫になりたい男だよ、と。
 でも、今それを言うべきではないと、涼は思った。
 だから涼はただ、香澄の頭を撫でるだけにした。
 香澄は、そうしてやることで頬を涼に摺り寄せてきた。
 まるで、小さな子供のように。

「お父さん……お父さん……」

 他の誰に対しては言えた嘘。
 でも男として、香澄には嘘の言葉を吐きたくない。
 だから、頷くことはできなかった。
 ただ、撫でてやることしか、涼にはできない。

「ねえ、お父さん……」

 香澄は、さらに言葉を重ねた。
 その言葉は、涼に強い衝撃を与えた。

「香澄を助けたから死んじゃったんでしょ!?」

(今、何て……)

「香澄がお父さんに絵本読んでって言わなければお父さん死ななかったって、おばあちゃんが言ったの。香澄が生まれたせいで、お母さんがお父さんと結婚したんだっておばあちゃんが言ったの。だから、香澄は生まれちゃダメな子だったんでしょ!?ごめんなさいお父さん!香澄のせいでごめんなさい……!」
「そんなことを言われたのか!?」

 涼は、叫んで気づいた。
 香澄が、自分と目が合ったことを。
 そして、話し相手が涼だったことを、心底ガッカリしているとわかる顔を見せた。

「お父さんじゃ……ない……」

 それから香澄は、涼にもたれかかるように意識を手放した。

「香澄!香澄……!?」

 涼は、急いで香澄を抱えて自分のフェラーリに乗せた。
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