二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
(今日書く話は、どんな場面だったかな……)

 香澄は、ノートと昨日更新分を確認する。
 ぴたりと、手が止まってしまった。

(そっか、今日はあのシーンを書かないといけないのか……)

 このあと書くべきメインの見どころは、ヒロインとリュウとのラブシーン。
 恋愛の仕方が分からないと悩んでいたヒロインに、リュウが

「俺が、お前に恋愛を教えてやるよ」

 と、ヒロインに宣言した場面で、もう1週間以上執筆は止めてしまっていた。
 ちなみに、WEB小説での連載自体は、現在はノリにノッていた時に続けてしまった徹夜の日々で書き溜めたストックでどうにか回しているので、あと1ヶ月分は書かなくて済んでいる。
 この言葉は、あのクリスマスの日にリョウに言われた言葉を少しアレンジしたもの。
 香澄がリョウに言われたのは、直接的にベッドのことを想起させるセリフだったので、もう少しマイルドな表現になれば、と思って考えたセリフではあったけれど、そのセリフが香澄の胸を逆に締め付けてくるのだ。
 きっとそれは、香澄が心の奥底で求めていた、本当の願いだったかもしれなかったから。
 香澄は、じわりと目頭が熱くなったのを感じたので、急いでティッシュで目頭を拭ってから

「何考えてるの!香澄!今更今更!」

 と、わざと自分に言い聞かせるように大声を出してから、PCに向かおうとした。
 その時、最近自分を悩ませているあの症状に襲われた。

「と、トイレ……」

 1週間程前から、定期的に襲ってくる吐き気は、香澄の体力を確実に奪っていた。
 この2月の時期であれば、甘党の香澄にとっては自分用のご褒美バレンタインチョコをウキウキな気分で楽しんでいるはずだった。
 しかし、現在はチョコレートを買うどころか、今やまともな食事すら摂れない状態だった香澄は、どんなにトイレで吐く努力をしても、胃液くらいしか出てこなくなっていた。
 こんな体の状態もあるので、小説を考えると言うプライベートのための時間を減らさざるを得なくなったので、結果的になかなか続きを書くことができなくなっていたのだ。

(早く、ヒロインを幸せにしてあげたいのに……私の代わりに……)

 香澄は、よれよれになった体でどうにか部屋に戻ってから、プロットを書き溜めたノートを手にベッドに横たわる。
 もう、これ以上座ることも立つこともできない状態になっていたから。
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