二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
(今年の風邪は特に酷い……酷すぎる……)
引きこもり故に体力が無いせいなのか、香澄にとって年明け頃に体調を崩すのは毎年おなじみだった。
自分がこうなると分かっていた香澄は、一人でも体調不良を乗り越えられるようにと、ネットスーパーを駆使して準備をしていた。
それが、香澄にとっては毎年のことだった、はずだった。
一人で体調不良を乗り越えるようになってから、もう5年は経っていたので、今年も乗り越えられると思っていた。
けれどもどうしてか、香澄にとって今回の体調不良は何かが違っていた。
毎日急に襲いかかってくる吐き気。
大好きだったはずのチョコレートの香りが急に嫌いになるという、初めての経験。
どれだけ寝ても、なかなか解消されない眠気。
そして、ここ数日ずっと続く頭痛。
何か、変な病気にでも罹ったのだろうかと、香澄は夜がくる度に怯えるようになっていた。
そんな香澄だったが、この苦しさを忘れられる時が2回ある。
1つ目は、シナリオの仕事をしている時。
元々集中力は抜群にある香澄は、目の前のPC画面に集中している時はまるで無敵の星でも手に入れたかのように、体調不良のことも忘れてガシガシと物語を書き進めることができた。
ただ、その分反動はとても大きい。
1日のノルマを達成した後、香澄は1時間以上机に突っ伏して動けなくなる、ということもしょっ中。そのせいで、食事もお粥一口食べるのも面倒になるという状況が、香澄には続いていた。
そしてもう1つの忘れられる瞬間というのが、香澄が今連載しているWEB小説のために考えたプロットノートを見つめる時だ。
そこに書かれているのは、香澄の言葉によって蘇ったクリスマスの夜の流れと、その出来事をもとに作ったリュウというキャラクター。
ノートを捲るだけで、香澄はいつでもあの晩に帰ることができるようになったのだ。
あんなに安らかな気持ちで、男性と抱き合えるなんて知らなかった。
心地いい声や言葉があるなんて知らなかった。
所々覚えていない部分はあるものの、自分の脳の中から思い出が消え去らないうちにと香澄は必死にまとめ上げた。
その結果、このプロットノートを開けばいつでも「リュウ」というキャラクターに生まれ変わったリョウに会える。
彼からもらった、一晩の温もりを思い出すと、香澄はほっと安心する。
それが、この体調不良を乗り越えるための支えになってくれていた。
きっと、世の中のリア充に、こんなことを知られてしまうと馬鹿にされるんだろうな……と香澄は頭によぎった。
けれど、そんなことすらどうでもよくなるくらい、自分の手で書き起こしたノートの中のキャラクターを、香澄は心から頼りにしていたし、何よりも求めていた。
香澄は、確かに今恋をしていた。自分が生み出した「リュウ」というキャラクターに。
その恋は、誰にも邪魔をされることはない。
それが、香澄がようやく辿り着いた、自分が幸せになるための恋だと思っていた。
今日もまた、香澄はプロットを見て、書かれた言葉の数々に酔いしれながら仕事の時間まではゆっくり眠ろうと思っていた。
その時、香澄の穏やかな時を邪魔するかのように、スマホからバイブ音が鳴り響いた。
音声通話の着信だった。
「また……」
それは、体調不良以外で香澄を悩ませているもう1つのこと。
香澄は、プロットノートをぎゅっと握りしめながら、どうにかスマホに手を伸ばし
「もしもし」
と、振り絞って声を出した。
「香澄ちゃん!来週!付き合って!」
子供のように香澄を頼ってくる中年女性の声を聞いて、香澄の頭痛はより酷くなっていく。
「私には関係ないじゃん、お母さん……」
「そんなこと言わないで!お互いたった一人の家族同士じゃない」
香澄は、毎度繰り返される口先だけの家族愛に呆れながらも、話をとりあえず聞いてやることにした。
引きこもり故に体力が無いせいなのか、香澄にとって年明け頃に体調を崩すのは毎年おなじみだった。
自分がこうなると分かっていた香澄は、一人でも体調不良を乗り越えられるようにと、ネットスーパーを駆使して準備をしていた。
それが、香澄にとっては毎年のことだった、はずだった。
一人で体調不良を乗り越えるようになってから、もう5年は経っていたので、今年も乗り越えられると思っていた。
けれどもどうしてか、香澄にとって今回の体調不良は何かが違っていた。
毎日急に襲いかかってくる吐き気。
大好きだったはずのチョコレートの香りが急に嫌いになるという、初めての経験。
どれだけ寝ても、なかなか解消されない眠気。
そして、ここ数日ずっと続く頭痛。
何か、変な病気にでも罹ったのだろうかと、香澄は夜がくる度に怯えるようになっていた。
そんな香澄だったが、この苦しさを忘れられる時が2回ある。
1つ目は、シナリオの仕事をしている時。
元々集中力は抜群にある香澄は、目の前のPC画面に集中している時はまるで無敵の星でも手に入れたかのように、体調不良のことも忘れてガシガシと物語を書き進めることができた。
ただ、その分反動はとても大きい。
1日のノルマを達成した後、香澄は1時間以上机に突っ伏して動けなくなる、ということもしょっ中。そのせいで、食事もお粥一口食べるのも面倒になるという状況が、香澄には続いていた。
そしてもう1つの忘れられる瞬間というのが、香澄が今連載しているWEB小説のために考えたプロットノートを見つめる時だ。
そこに書かれているのは、香澄の言葉によって蘇ったクリスマスの夜の流れと、その出来事をもとに作ったリュウというキャラクター。
ノートを捲るだけで、香澄はいつでもあの晩に帰ることができるようになったのだ。
あんなに安らかな気持ちで、男性と抱き合えるなんて知らなかった。
心地いい声や言葉があるなんて知らなかった。
所々覚えていない部分はあるものの、自分の脳の中から思い出が消え去らないうちにと香澄は必死にまとめ上げた。
その結果、このプロットノートを開けばいつでも「リュウ」というキャラクターに生まれ変わったリョウに会える。
彼からもらった、一晩の温もりを思い出すと、香澄はほっと安心する。
それが、この体調不良を乗り越えるための支えになってくれていた。
きっと、世の中のリア充に、こんなことを知られてしまうと馬鹿にされるんだろうな……と香澄は頭によぎった。
けれど、そんなことすらどうでもよくなるくらい、自分の手で書き起こしたノートの中のキャラクターを、香澄は心から頼りにしていたし、何よりも求めていた。
香澄は、確かに今恋をしていた。自分が生み出した「リュウ」というキャラクターに。
その恋は、誰にも邪魔をされることはない。
それが、香澄がようやく辿り着いた、自分が幸せになるための恋だと思っていた。
今日もまた、香澄はプロットを見て、書かれた言葉の数々に酔いしれながら仕事の時間まではゆっくり眠ろうと思っていた。
その時、香澄の穏やかな時を邪魔するかのように、スマホからバイブ音が鳴り響いた。
音声通話の着信だった。
「また……」
それは、体調不良以外で香澄を悩ませているもう1つのこと。
香澄は、プロットノートをぎゅっと握りしめながら、どうにかスマホに手を伸ばし
「もしもし」
と、振り絞って声を出した。
「香澄ちゃん!来週!付き合って!」
子供のように香澄を頼ってくる中年女性の声を聞いて、香澄の頭痛はより酷くなっていく。
「私には関係ないじゃん、お母さん……」
「そんなこと言わないで!お互いたった一人の家族同士じゃない」
香澄は、毎度繰り返される口先だけの家族愛に呆れながらも、話をとりあえず聞いてやることにした。