二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
「お待たせして申し訳ございません」
「いえ、大丈夫です」

 香澄は受け取ってすぐ、お茶の蓋を開けて一口飲んだ。
 少しだけ、胸のムカムカが取れた気がした。

「こちらこそ、ご迷惑をかけてすみません、先生」

 香澄がそう言うと、美女はぽかんと目を丸くしてから首を傾げた。

「先生、ですか?」
「え?違うんですか?」
「あはははは、香澄ちゃんもしかして勘違いしてたの?」

 香澄の問いかけは、真横にいた母親を笑わせた。
 ばしばしと背中を叩いてくる母親に、香澄は軽い殺意を抱きそうになった。

「あなた、私が送った事務所名ちゃんと見た?」
「え?せりざわすず……じゃないの?」
「あなた、まさか涼しいの漢字をすずとしか読めないの?」

 その言葉に、香澄はムッとした。
 曲がりなりにも、言葉を使う仕事をしている香澄だ。
 その香澄の言語能力を母親にバカにされたような気がしたのだ。

「え、じゃあ……」

 香澄は、もう1度ゆっくりと並べられた芹沢涼の漢字を見ながら他の読み方を考えようとした。
 そしてすぐに、もう1つ読み方を思いついた。
 
「もしかして……」

 香澄が、その思いついた読み方を言おうとした時だった。
 きいっと、香澄の背後の扉が開く音がした。

「あ、先生がいらっしゃいました。私は1度失礼しますね」

 美女がさっと立ち上がり

「クライアント様がお待ちです、芹沢先生」

 と声をかけた。

「ああ、分かった」

 その声を聞いてすぐ、香澄は自分の体が急に熱を持ち始めるのを感じた。
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