二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
 それから香澄と母親は、せりざわすずさんらしき美女と一緒に、事務所に入った。
 案内された待合室には、ふかふかなソファが置かれており、母親は

「どっこいしょー」

 という声と一緒に恥じらいもなく座った。
 そんな母親の真横に座らなければならない自分の不幸を、ため息で落ち着かせてから、香澄は丁寧にそのソファに腰掛けた。

(あ、似てる……)

 クリスマスに偶然泊まることになった、あのスイートルームのソファを思い出させるような質感だったので、香澄の脳内にあの人ことが一瞬蘇りそうになった。
 
(いけない、そんなことしてる場合じゃない)

 せりざわ先生という、天女のような美女に相談しないといけないのが、この下品極まりない母親の遺産相続トラブルだ。
 普通の遺産相続トラブルとは違う。
 この母親は、父親が死んですぐに奥さんがいる人と関係を持ち、その家庭を壊してから結婚したのだ。
 不倫をテーマにした小説ではよくありがちな話だが、身内でそれをやられたらたまったものじゃない。
 そんな恥を、美女に晒さないといけないという生き地獄に、香澄は体調不良とは別の意味で目眩を起こしそうだと思った。

「お母さん、どうしてこんなところに相談しにきたの?」

 せめてもっと、こじんまりとした町中のアットホームな事務所ならば、身分相応だったろうに……と、香澄は考えた。

「ねえ、絶対ここ値段高いと思うんだけど?今からでも遅くないから、事務所変えない?」

 金にがめつい母親を説得するには、お金のことを持ち出すのが1番だと言うことも分かっていた。

「でも、知り合いの知り合い価格で安くしてもらえるって聞いたのよ」
「知り合いの知り合い?」

(どういうことだ?)

 自分の母親の人間関係を考えてみた時に、あの美女の知り合いと、母親の知り合いが一緒になるなんてことあるのだろうかと、香澄は考えてしまった。

「そうなのよー。ほんとラッキーだったわ」

(こっちはアンラッキーだよ)

 母親の上機嫌な鼻歌に香澄がうんざりした時だった。

「失礼します」

 せりざわ先生らしき美女が、お茶のペットボトルを2つ持って入ってきた。
 美女に運ばれたお茶は、2割増に美味しそうに見えた。v
< 62 / 204 >

この作品をシェア

pagetop