二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
5.予想外な彼の告白
 チクタクと、時計の針が進む音が暗闇の中に響いているのが、香澄が感じた最初の刺激。
 それに、ふんわりと優しい花の香りが、香澄の鼻腔をくすぐってくる。

(この香りは……)

 香澄には、馴染みのあるラヴェンダーの香りだった。
 緊張やストレス感を和らげてくれるだけでなく、気持ちを落ち着かせる効果があると言われているラヴェンダーの精油を、眠る直前に嗅ぐのが私の日課だった。
 それを教えてくれたのも、やはり八島だった。
 ただ、最近の香澄は、ラヴェンダーの香りに少し嫌悪感を抱くようになっていたので避けるようにはなっていたのだが……。

(不思議……ラヴェンダーの香りのはずなのに、嗅いでて心地いい……)

 香澄は香りに意識を向けてみた。
 すると、ラヴェンダー以外の別の香りがあることに気づいた。

(レモン……かな……?)

 嗅ぐだけで、舌から唾液が出そうなほどの爽やかな香りにまず気づいた。
 でも、それだけでも説明がつかない、別の香りも混じっているような気がした。
 香澄は、心当たりがある気がするのに、なかなか答えを見つけられないでいた。

(そういえば、私……)

 香澄は、この時になってようやくうっすらと目を開けた。
 真っ先に目に入ったのは、清潔感溢れる真っ白な天井。
 それから、少しだけ顔を傾けると、自分がとてつもなく大きなベッドに横たえられていることにも香澄は気づいた。
 3回くらいは連続で寝返りを打っても、落ちそうにもないくらいの幅。

(キングサイズっていうんだっけ……?)

 意識した途端、さらりとしたシーツの肌触りの良さにも香澄は気づいた。
 この心地良さに、香澄は心当たりはあった。
 あのクリスマスイブを過ごした、ホテルの寝室のシーツとよく似ていた。

(ここは……どこ……?)

 香澄は、自分が置かれてる状況を理解しようと、頭を整理しようとし始めた、その時。


「反対よ!私はゼーったい反対なんだから!!!!」

(な、なんだ!?)

 声に驚いて、飛び起きた香澄は、自分がモデルルームかホテルの一室のような、広くて綺麗な部屋にいることにもようやく気づいた。
 声は、閉め切られた扉の向こうから聞こえた。
 そして、声だけだからこそ分かる。

(先輩の声だ……)

 一体、何がどうなっているのか。
 香澄は、自分がちゃんと自分の服を着たままであることを確認してから、ゆっくりとベッドから降り、扉を恐る恐る開けてみた。
 すると……。
< 78 / 204 >

この作品をシェア

pagetop