90日のシンデレラ
 ――むしろ変に遠慮してしまうほうが、北峰様の気分を損ねてしまいますので。

 今までの経緯から、それは容易に想像がつく。だから真紘は、ストレートに服の礼を口にしたのだった。
 服の代金はそうとして、まだ真紘には気になることがある。それは、今までの中でも一番重大なこと。
 それをこの場で早く確認してしまいたいと思うけど、まだそのタイミングではない。だって、目の前に美味しそうなオープンサンドが、今か今かと真紘たちのことを待っているのだから。
 そんな真紘の気持ちを見透かしているかのように、瑠樹は食事をはじめる。

 「サーモンとツナ、どっちがいい? それとも半分ずつにして、両方味わう?」

 瑠樹のセリフは、レディファーストでもあれば対等(イーブン)でもある。
 レディファーストで好きな方を選ぶことができるのは嬉しいが、イーブンにして同じものを一緒に味わうのも素敵なこと――初デートということで瑠樹はいろいろ演出してくれている。
 となれば、真紘が取る選択肢はただひとつだ。

 「そうですね、両方食べてみたいので、半分こしてもらえますか?」

 瑠樹から、カテラリーケースのナイフとフォークが渡される。サンドイッチとついているけれど、予想どおりオープンサンドは手で食べたりしなかった。
 器用に瑠樹はオープンサンドを切り分けて、中身を入れ替えた。それぞれのプレートにサーモンのものとツナのものと、ふたつが並ぶ。
 肉料理を食べる要領でひと口大に切り分けて、真紘はパンとサーモンを一緒に口へと運んだ。ゆっくりと噛みしめれば、サーモンの甘さとパテの風味が、パンの歯ごたえとともに優しい味がした。



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