90日のシンデレラ
 「嫌?」といわれたら、「そうではない」と真紘はうっかり否定してしまいそうになる。
 でもそういってしてしまうと、また元の立ち位置に戻ってしまう。この悶々する気分、本当にこの人は私のことが好きなのかという疑惑に、また真紘は悩まされるだけ。
 今は、その会話の流れを変えなければならない。

 「嫌とかではなくて……」
 と、真紘は瑠樹の巧みな言葉使いから逸脱を試みる。でも、やはり瑠樹のほうが上手で、
 「なら、いいじゃん」
 と、畳みかける。
 遠慮して言葉を選んでいては、いつまでたっても解決できない。そう覚悟を決めて一切の美辞麗句を取り払い、真紘は焦りからくる勢いのままに今の心境を告白した。

 「あの私、カノジョになったという実感がわかないんです。一体、私のどこを気に入って北峰さんは私をカノジョにしたのか、謎なんです。北峰さんとは出会って間もないし、同じ案件に携わっているといってもミーティングは一回しかしていないし。カノジョにするっていうには、あまりにもお互いを知らなすぎると思います。短時間で感情がそんなに変化することが、不自然です」

 ついに本音が口に出せた!
 一度に心内を吐き出して、真紘は肩の力が抜けた。

 こう問われて、瑠樹のほうは
 「うーん、確かに俺、社にほとんどいないからな~」
 と、のん気な調子で答えたのだった。

 ここにタイミングよく、アイスクリームが運ばれる。「柚子のアイスになります」と告げて、レモン水のピッチャーも交換してウエイトレスが下がっていく。
 溶けてしまう前に食べようかと瑠樹がいい、ひとまずの真紘の追及は棚上げになった。

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