90日のシンデレラ
 「真紘は一度指摘した過ちを繰り返さないから、チェックするほうは楽だった。要望した添付資料も的確だし、そこから導き出す具体策は極めて優良で実行できそうなものも多かったし。正直、子会社のことを格下にみてしまいがちになるが、その思い込みを覆す社員がいるんだとわかって、目が覚めた気分だった」

 真紘のレポートの出来からはじまって、真紘の仕事の評価、引いては田舎の子会社社員についてのことまで、瑠樹は感想を述べる。その評価は、これも悪くない。

 真紘は一度指摘した過ちは繰り返さないから、チェックするほうは楽だった――真紘としては、企画開発研修と兼務していて業務改善コンペにたくさん時間が取れなかった。また間借りのことでゴタゴタもしていたから瑠樹との接点を少しでも減らすために、ミスしないように気を配っていた。
 結果として、仕事の効率アップにつながっていた。
 これは誰もが気が付くような目立つ成果ではない。これは小さな小さな真紘の努力、だけど瑠樹はちゃんと気づいていて認めてくれていた。

 「仕事の質は上等で、間借りの件では余計な詮索をしない。マジで真紘は理想的な部下だ。最初のガイダンスで目が合ったときはイケてない田舎社員そのものだったけど、それはルックスだけだったもんなぁ~」
 「!」

 瑠樹はずっと真紘が感激するようなことばかりいっていたのに、容姿についてはとても違っていた。
 真紘は調子が狂う。今まで持ち上げられていた分だけ、その落差はひどく大きい。

 自分が田舎者でイケてないというのはよくよく自覚しているが、他人からダサいと指摘されると胸が痛む。なまじ都会のイケメンの口からだと、その破壊力は強烈だ。

 (そうよね、ダサい上に仕事ができないとなれば、最悪だもん)
 (仕事は一応認められたとして、これがダサさのカバーになっていたらいいんだけど……)

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