90日のシンデレラ
 ヒールの高さは元のものと変わらないが、やはり新しい靴であちこちで歩き回るのは遠慮したい。大荷物もあれば、このあと食料品も買う予定である。予定がすり替わって瑠樹とデートをしているが、本日は買い出しの予定だったのだ。

 「面倒でなければ、出直したいです」
 「いいよ。ところで夜はどうする?」

 (夜?)
 (夜って?)
 (やっぱり、夜って、ことよね?)

 『夜』という単語に硬直する真紘を見つけて、瑠樹は吹き出した。

 「晩飯のことだよ」
 「!」

 硬直のあとに、『晩飯』で赤面する真紘がいる。
 穴があったら入りたい、何ひとりで飛躍しているんだよと、ばつが悪くなる。

 「いやぁ~、真紘、かわいいわ」
 「…………」
 「もちろんそうなってもいいけど、とりあえず、テーラーの分だけでは腹が足りない。途中でスーパーにでもよって、おやつと晩御飯を仕入れてこようぜ」

 もともと買い出しの予定だったので、この提案には同意しかない。

 「あ、いいんですか? 私としては一週間分の買い出しをしたいので助かるのですが……」
 「いいよ。せっかくだし、俺の手料理をふるまってやろう」
 「え? 北峰さん、お料理するんですか?」
 「するよ。ボーディングスクールでは必修科目だった。それまで料理をしたことはなかったけど、意外と楽しいなぁってわかって、気が向いたらキッチンに立っている」

 オシャレ男子、何かとレベルが違う。それは、都会と田舎の違いもあれば、金持ちと庶民の違いもある。瑠樹の言葉ひとつひとつに真紘はまたもや目が丸くなる。

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