90日のシンデレラ
 会計前に真紘がマイバックを取り出すものの、目分量ですぐにわかる。この量は多すぎて全部入らない。
 それを見越して瑠樹はレジ袋を注文し、スマートに会計を済ましてしまう。せっせとふたりで食料品を移し替えて、それぞれが持つ。
 そうしてスーパーをあとにする際に偶然、出入り口の大きなガラス扉に映ったふたりの姿が真紘の目に入った。
 そこには、地下鉄のときとは違う、テーラーのカフェで食事をしたときとも違うふたりがいた。そう、遊びにいった帰りに夕飯の材料を買いに寄ったカップルでしかなかった。

 「…………」

 テーラーのときも素敵なデートであれば、真紘は夢をみているかのようでうっとりした。今はテーラーのときとは真逆の庶民的な日常の行動だが、これも変に照れが出てくる。

 この人と結婚するようなことがあったら、こんな生活が訪れるのだろうか? 

 飛躍も、飛躍し過ぎる真紘のふとした気づきである。
 今までのカレシとは真紘が自宅住まいということで、こんな買い物などしたことがない。買い物をしたことももなければ、手料理を振る舞ったこともない。今のような未来の生活を想像したことはなかった。

 「真紘、どうした?」

 いつの間にか歩みが止まっていた真紘を、先ゆく瑠樹が催促する。

 「あ、なんでもないです」

 小走りして、真紘は瑠樹を追いかけるのだった。


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