90日のシンデレラ
 体全体で瑠樹の温もりを受け止めると、直接触れる肌がとても気持ちいい。
 初デートで手をつないだときも、その手のひらから伝わる温かさに真紘は安堵した。慣れない東京生活で、はじめて乗った地下鉄の路線に真紘は戸惑いが隠せなかった。でも「この人に任せていれば大丈夫」という確信を得る。ガラス窓に映るふたりの姿の不釣り合いさにずっと恥ずかしい思いをしていたが、その後ろ側ではそんなことも思っていたのだ。
 瑠樹の手のひらだけで、真紘はこんなにも安心してしまう。今こうやってたくさんのところで瑠樹と触れていれば、もっと心が丸くなっていく。

 首元になにか柔らかいものが擦れる。これはそう、あの瑠樹のウェーブの髪だ。
 胸元ではテンポの速い息づかいを感じる。頬ずりをしているのか、独特の細かな痛点が肌を刺す。下腹部付近には、硬いものが当たっていた。

 「真紘、いい?」
 「はい」

 瑠樹からの要求に、素直に真紘は答えることができた。
 ずっとずっと気に掛けていたこと、この間借り生活がはじまったときからずっと気にかかっていたことが、いま現実のものとなろうとしている。

 大きな手が、真紘の肩を包む。包んだ肩を何度も何度も優しく撫でて、するりそこから消えたと思ったら、今度はふたつの膨らみを包み込んでいた。指が先端を弄りながら、ここも優しく優しく揉み捏ねる。自分の胸がこんなに柔らかくなるなんて、そんなふうに変形しても痛くないなんて、不思議である。
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