90日のシンデレラ
 不思議なことはさらに続く。刺激をもらうのは胸元なのに、足の奥がきゅうきゅうと切ない感じがして堪らない。強く足を組んでそれを逃したくとも、今の真紘の足の間には瑠樹がいて、どうにもできなかった。

 「真紘、気持ちいい?」
 「う、うん。………た、ぶん」

 胸元に小さな痛覚や愛撫をもらったあとに、大きな痛覚がやってくる。ちゅううぅという、不思議な音とともに。
 瑠樹の唇は強烈な一撃の跡を真紘の胸元に残しただけでなく、まだまだ落ち着く様子がない。勝手に真紘の胸元へうっ血の印をつけたあと、唇は膨らみの先端に吸い付いた。

 瑠樹の口の中で、敏感な粒が転がされる。舌先が意地悪につつき、ときに歯を立てて甘嚙みする。
 くすぐったい、気持ちいい、こそばゆい、なんだか変になりそうで……
 ひと舐めされる度に、腰をひねってその愉悦を逃そうとする。そんな真紘の様子がおかしいのか、瑠樹のほうは意地悪く仕掛けてはその善がる姿をみて悦に入る。
 我慢できないと余裕のないセリフを吐いたのは瑠樹のほうだったのに、あっさり逆転してしていた。

 「真紘」

 全身を撫でられながら、カレシが自分の名を呼ぶ。それは、答えを求める呼びかけではない。

 「瑠樹さん」

 真紘だって、呼ばれて何か意味のある言葉を返すわけではない。
 ただ、ふたりは相手の名を呼び、相手からの声をきき、暗闇の中で肌の温もりを手探りして確認する。

 伝う指が脇腹を、腰のラインを、太もも横を、さらに膝小僧を超えて、ふくらはぎに到達する。滑らかな女の肌質を堪能して、手のひらが今度は足首を、真紘を包む布ではなく足首を捉えにかかる。抵抗も何もあっさり瑠樹の手に捕まってしまえば、柔らかな力で持ち上げられた。

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