90日のシンデレラ
 膝を折った足の間に瑠樹を抱え込んだ真紘がいる。ふたりを隔てるものは何もない。
 ゆっくりと熱杭が、真紘の足奥目指して入っていく。待ち受ける粘膜は熱くて潤っていて、楔に抵抗するのもがあっても微々たるものでしかない。

 「真紘、かわいい」

 己の腰を押し込みながら、腹の底から瑠樹が想いを吐き出す。愛しい人の艶のある声が真紘の耳に入る。やや掠れたその声に、また真紘はときめいてしまう。
 全裸で肌を寄せあって、セクシーな声でかわいいといわれてしまっては、もう真紘にはなす術がなくて……
 いつの間にか自由になっていた両手を瑠樹の背中へ回した。そしてぎゅうと抱きしめる。真紘にできることはこれぐらいだ。

 「真紘の手、温かい」

 背中に感じる真紘の手に、そう瑠樹は満足する。
 温かい手――それは、貴方だってそう。あなたは繋いでくれた手だけでなく、キスしてくれた唇も、触れているこの肌も、深く交わる箇所だって、どこもかしこも温かい。
 足を固定する手はもういらない。用のなくなった手は、真紘の肩を抱く。正真正銘、ふたりは一心同体となる。

 「真紘」

 名前だけで、条件反射のように心が震える真紘がいる。心だけでなく、体もうずく。無意識のうちに腰が揺れて、真紘から誘いをかけていた。
 カノジョから要望をもらってしまえば、素直にカレシは応じるのみ。

 ぎしぎしと簡易ベッドが揺れる。静かな静かな部屋に、ふたりだけの世界に。
 いつしか冷ややかだった夏の夜の空気が、いまでは嘘のように消えていた。
 真紘、真紘と声がする。シーツをくちゃくちゃにして、でもそんなことはどうでもよくて、ふたりで一緒に律動を楽しむ。
 今のこの時間がいつまでも続けばいいなと真紘は思うばかりであった。
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