90日のシンデレラ
9*悪魔との別れ
赤いワンピースをもらった日から、世界が一転する。いや、一転したのは、内側だけ。表面的には何も変わらない。
表面的には――そう、瑠樹はだいたい深夜にやってきて、仮眠を取って、翌朝早くに真紘のマンションを出ていく。真紘の業務改善コンペの案件も依然と変わらず、レポートのやり取りだけで進めている。他には、本社ビルでふたりがすれ違うことがあっても、特に会話などせず真紘が会釈して終わり。
そう、間借り生活がはじまった頃とまったく変わりないのだ、本社での昼間は。
変わったのは、平日の夜と休日の時間である。
いつしか瑠樹は、まるで自宅かのように真紘の借り上げ社宅に居座るようになっていた。
ある日の平日の夜である。午後九時過ぎに玄関ロックの外れる音がしたと思えば、出張先の土産を手に瑠樹がやってきた。
今週は月曜からずっと木曜日まで、瑠樹に出張が入っていた。
「ただいま、真紘」
「瑠樹さん、おかえりなさい」
「旨そうな生麺があったから、買ってきた」
と、手渡される。ご当地ラーメンの麺とスープのセットである。土産は他にもあって、それは押し寿司だ。
ふたつの土産物の中身と分量から、ラーメンが今週のふたりの昼ご飯で、押し寿司が今晩の瑠樹のご飯だと真紘は判断した。
そのままでは生麺が傷んじゃうと真紘が冷蔵庫へ入れる。その間に、瑠樹は瑠樹でさっさとスーツを脱いで浴室へ向かった。
表面的には――そう、瑠樹はだいたい深夜にやってきて、仮眠を取って、翌朝早くに真紘のマンションを出ていく。真紘の業務改善コンペの案件も依然と変わらず、レポートのやり取りだけで進めている。他には、本社ビルでふたりがすれ違うことがあっても、特に会話などせず真紘が会釈して終わり。
そう、間借り生活がはじまった頃とまったく変わりないのだ、本社での昼間は。
変わったのは、平日の夜と休日の時間である。
いつしか瑠樹は、まるで自宅かのように真紘の借り上げ社宅に居座るようになっていた。
ある日の平日の夜である。午後九時過ぎに玄関ロックの外れる音がしたと思えば、出張先の土産を手に瑠樹がやってきた。
今週は月曜からずっと木曜日まで、瑠樹に出張が入っていた。
「ただいま、真紘」
「瑠樹さん、おかえりなさい」
「旨そうな生麺があったから、買ってきた」
と、手渡される。ご当地ラーメンの麺とスープのセットである。土産は他にもあって、それは押し寿司だ。
ふたつの土産物の中身と分量から、ラーメンが今週のふたりの昼ご飯で、押し寿司が今晩の瑠樹のご飯だと真紘は判断した。
そのままでは生麺が傷んじゃうと真紘が冷蔵庫へ入れる。その間に、瑠樹は瑠樹でさっさとスーツを脱いで浴室へ向かった。