90日のシンデレラ
 「う、こんなに」
 「仕方ない、レポートに説得力に欠けるから」
 「…………」

 真紘としては、何が何でも次の選考会を突破したいわけではない。当初はこのあたりで落選して、企画開発研修のほうに集中するつもりであった。
 だが落選した大村と対話して、仕事に対する彼女の熱意に触れる。大村のことを思えば、こんな考えはよろしくないなと真紘は予定を変えて今は真面目に取り組んでいる。
 そういう気持ちはあるものの、どうしても真紘の能力ではオーバーワークとなり、どこか足りない箇所がレポート等に顔を出していた。

 「そう、辛そうな顔をしない」
 「いや、だって、厳しいなって」
 「他のメンバーだって、同じだ」
 「ですけど……」
 「ここだけの話、いま残っているコンペメンバーで子会社社員は、もう真紘だけだ。つ・ま・り、真紘は、子会社全体の代表になっている。代表なんだから、弱気な発言はしない」

 そういわれると、反論できない。また大村の顔が脳裏にちらついた。
 また真紘は、こんなことも気になる。今までのコンペ選考会に瑠樹の私情は入っていないとは思うが、こうやって社外の個人的な場で親密にレポート添削を受けていれば、選考に影響しないかと。そんな穿った見方を真紘はしてしまう。

 案件がキツくなってもやん(・・・)とするところに、ぽんと頭に手が載せられた。瑠樹の大きな手が、そのまま真紘の頭を「いい子いい子」する。

 「一生懸命やって、結果落選したってかまわない。これは社内コンペで、落ちれば減給なんてペナルティはない。社としては、社員の意識改革の一画として行っているものだから」
 「…………」
 「どうしてもっていうなら……」

 ちらりと瑠樹が頭に手をのせたまま、俯き加減となった真紘の顔を覗き込む。彼は言葉尻を濁しているが、その先のセリフはきっとこうだ。

 ――手伝ってやってもいいんだぜ。

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