90日のシンデレラ
本社研修を打診されて恐る恐る東京に向かった真紘であったが、社の計らいで快適な研修生活を送っていた。
瑠樹のことは混乱からはじまったが、今では生活の一部となっている。むちゃくちゃなペースの瑠樹ではあるが、一度それに慣れてしまえば不思議と同調できる真紘がいた。
嫌々であれば、それの終わりの日を指折りして数えてしまうもの。逆に楽しければ、それが永遠に続いてほしいと願うもの。
時間の流れは一定でも気持ちの持ち方ひとつでこうも感覚が違ってくるのだと、ひしひしと感じた鎌田女史のひと言であった。
(来月頭には、実家かぁ~)
(まぁ、ご飯の心配はないんだけど、また実家生活かぁ~)
家族のことが嫌いというわけではない。だけど、ひとり暮らしの快適さを知ってしまえばややブルーになる。独身女性のひとり暮らしをいいようにいわない地区であれば、実家を出るには結婚をするしか術がない。そんな田舎の事情を思い出すとため息が出てしまう。
出向元の孫会社だってそう。規模を考えると、待遇や設備が本社に比べて格段に劣るのは仕方がない。それは、ハード面だけでなくソフト面でもそう。田舎独特のどこか閉塞感のあるあの社に戻ると思えば、気持ちが萎えてしまう。中央と周辺の格差をみてしまったがゆえの、誤魔化せない感情だ。
「…………」
でもどんなに希望しても、真紘は田舎孫会社の社員である。いま持っている社員証だって、研修終了と同時に返却だ。返却すれば、真紘は本社ビルには入れない。あの社宅だってそう。
(ああ、ダメ。暗いことばっかり、考えてしまう)
(そもそもが、三ヶ月限定の社員なんだから、元に戻るだけ)
(今までの頑張りに神様がご褒美をくれたものだと考えて、ちょっと素敵な時間をもらったと考えよう)
無理矢理前向きな理由をひねり出して、真紘はスーパーをあとにしたのだった。
瑠樹のことは混乱からはじまったが、今では生活の一部となっている。むちゃくちゃなペースの瑠樹ではあるが、一度それに慣れてしまえば不思議と同調できる真紘がいた。
嫌々であれば、それの終わりの日を指折りして数えてしまうもの。逆に楽しければ、それが永遠に続いてほしいと願うもの。
時間の流れは一定でも気持ちの持ち方ひとつでこうも感覚が違ってくるのだと、ひしひしと感じた鎌田女史のひと言であった。
(来月頭には、実家かぁ~)
(まぁ、ご飯の心配はないんだけど、また実家生活かぁ~)
家族のことが嫌いというわけではない。だけど、ひとり暮らしの快適さを知ってしまえばややブルーになる。独身女性のひとり暮らしをいいようにいわない地区であれば、実家を出るには結婚をするしか術がない。そんな田舎の事情を思い出すとため息が出てしまう。
出向元の孫会社だってそう。規模を考えると、待遇や設備が本社に比べて格段に劣るのは仕方がない。それは、ハード面だけでなくソフト面でもそう。田舎独特のどこか閉塞感のあるあの社に戻ると思えば、気持ちが萎えてしまう。中央と周辺の格差をみてしまったがゆえの、誤魔化せない感情だ。
「…………」
でもどんなに希望しても、真紘は田舎孫会社の社員である。いま持っている社員証だって、研修終了と同時に返却だ。返却すれば、真紘は本社ビルには入れない。あの社宅だってそう。
(ああ、ダメ。暗いことばっかり、考えてしまう)
(そもそもが、三ヶ月限定の社員なんだから、元に戻るだけ)
(今までの頑張りに神様がご褒美をくれたものだと考えて、ちょっと素敵な時間をもらったと考えよう)
無理矢理前向きな理由をひねり出して、真紘はスーパーをあとにしたのだった。