90日のシンデレラ
 「そういう起こし方、反則です」
 「え、いいじゃん! 俺は真紘のカレシなんだから」

 真っ赤になって真紘が文句をいえば、悪びれもせず瑠樹はそう(のたま)う。そればかりか、どーんと真紘の上にのしかかってきた。ブランケット越しにだけど。

 大きな手が真紘の上半身を抱き包む。長い両足が真紘の下半身を挟み込む。瑠樹が全身を使って恋人を包囲してしまうと、もう真紘はブランケットの蓑虫だ。

 (え!)
 (朝から?)
 (予告もなくやってきて、こんなことに……)

 まるまる一週間会っていなければ、びっくりの再会だ。驚きながらも真紘の中に、嬉しい気持ちが溢れてくる。全身全霊で愛情表現をもらってしまえば、なおさらに。

 「と、いいたいところだが……」
 「?」
 「時間がない。真紘、出かけるから用意して」

 つれないセリフとともに瑠樹の体の重みが遠のいていく。
 さっさと先にベッドから下りた瑠樹は、真紘の手を取り、ゆっくりと引いた。カレシの手につられて、真紘は身を起こした。
 起された真紘は、パジャマ代わりのカットソーワンピースに寝起きのくしゃくしゃの髪、もちろんすっぴんのノーメイクの顔だ。休日とはいえ緊張感のない真紘が、瑠樹の前にいた。

 (恥ずかしい……)
 (こんな姿みられたら、百年の恋も冷めてしまうじゃん!)

 居た堪れないというか、情けないというか、でも瑠樹のいうことに真紘は忠実だ。会えないと告げられていたが、なぜ会えたのか? その理由も知りたいが、まずは目下の疑問を真紘は口にした。

 「出かけるって、どこへですか?」
 「いいところ」
 「いいところ……」
 「そ!」

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