90日のシンデレラ
 いつもの突拍子のない瑠樹がいる。
 どこへいくのかわからなければ、何を着るのが正解かわからない。ブランケットに包まったまま悩む真紘に向って瑠樹は、

 「真紘、あの赤いワンピースを着てよ。あのワンピース、またみたい」

 と、本日のカノジョの服装を指定したのだった。




 そうして真紘は瑠樹からもらったあの赤のワンピースを着て、もちろん靴だってセットでもらったサンダルだ、瑠樹とふたりでここにいる。
 瑠樹に「いいから、黙ってついておいで」といわれ、行き先不明のまま電車に乗った。そうしてやってきたのは、とあるショッピングエリア。そう、そのエリアのすぐそばを、首都高速道路が走っている。

 目的地に着いた直後はわからなかったが、進んでいくうちにビルの谷間にすっくと姿勢正しく伸びている大木がみえてくる。瑠樹の隣を歩きながら真紘は気がついた。あれは夜の首都高からみたブルーツリーだと。

 夜のドライブの途中で、「もう一度、あのツリーをみたい」と真紘はいった。それは「環状道路をもう一周できるのなら」という意味だった。
 実際あの晩、瑠樹はリクエストに応えてくれて真紘は首都高速から再びツリーをみることができた。それでその話は終わりだと思っていた。
 でも後日、こうやってまた別のアプローチでブルーツリーを目にすることになるなんて……

 『今から俺はシーナちゃんのカレシ、シーナちゃんは俺のカノジョ』――瑠樹の軽い調子でお付き合いが始まったが、なかなかどうして、真紘のカレシはどこまでも真紘の願いを叶えようと頑張ってくれている。
 予告なしの強制外出となったが、ブルーツリー一本で真紘の気分は上々となる。単純な自分だと思いながらも、瑠樹の計らいは嬉しい。

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