90日のシンデレラ
こんな具合に、海外事業部のトップが個人的な理由で交代することになったのだが、当然その後釜が必要となる。
幸いにも暁紀が管轄していた東アジア部門は、暁紀が十五年かけて地ならしした。そのおかげで、後任者は暁紀ほどの苦労はないと思われた。
しかし、海外情勢は日々変わり、常にフロンティア精神を胸に抱いておかなければならない。そして当然のことながら、後任者はグループにとって信頼のおける人物でなければならない。
そこで北峰グループの会長でもあり本社社長の父が考えた暁紀の後任は、瑠樹であった。
今まで暁紀が東アジア部門を、次男の紗生が北米部門を、大元の日本法人は創業者の父が経営していた。父の年齢や事業所での在任年数などを考えると、三男の瑠樹が父の跡を継いで日本法人のトップに収まるだろうと本社では噂されていた。
「日本でのんびりできると思ったら、そうならなくてすまないな」
申し訳なさそうに、暁紀は瑠樹にいう。
「いや、お義姉さんの健康が第一だし。佑紀くんがほぼ現地人化しているといっても、やはり緊急のことを考えると誰かそばにいてあげるほうがいいと思う。大学生といっても、この間まで高校生だったんだから」
「瑠樹、本当に助かるよ。持つべきものは理解のある兄弟だな」
「ありがとう。それよりも、お義姉さんの治療方針が早くたつといいね」
特に嫌な顔をすることなく、瑠樹は暁紀にそう告げる。純粋に親族の健康を心配する瑠樹がいる。
多忙な瑠樹のスケジュールの裏側で、このような人事が動いていたことは誰も知らない。こんなふうに兄親子のために瑠樹がひと肌脱ぐことにしたというのも、まだ誰も知らない話であった。
幸いにも暁紀が管轄していた東アジア部門は、暁紀が十五年かけて地ならしした。そのおかげで、後任者は暁紀ほどの苦労はないと思われた。
しかし、海外情勢は日々変わり、常にフロンティア精神を胸に抱いておかなければならない。そして当然のことながら、後任者はグループにとって信頼のおける人物でなければならない。
そこで北峰グループの会長でもあり本社社長の父が考えた暁紀の後任は、瑠樹であった。
今まで暁紀が東アジア部門を、次男の紗生が北米部門を、大元の日本法人は創業者の父が経営していた。父の年齢や事業所での在任年数などを考えると、三男の瑠樹が父の跡を継いで日本法人のトップに収まるだろうと本社では噂されていた。
「日本でのんびりできると思ったら、そうならなくてすまないな」
申し訳なさそうに、暁紀は瑠樹にいう。
「いや、お義姉さんの健康が第一だし。佑紀くんがほぼ現地人化しているといっても、やはり緊急のことを考えると誰かそばにいてあげるほうがいいと思う。大学生といっても、この間まで高校生だったんだから」
「瑠樹、本当に助かるよ。持つべきものは理解のある兄弟だな」
「ありがとう。それよりも、お義姉さんの治療方針が早くたつといいね」
特に嫌な顔をすることなく、瑠樹は暁紀にそう告げる。純粋に親族の健康を心配する瑠樹がいる。
多忙な瑠樹のスケジュールの裏側で、このような人事が動いていたことは誰も知らない。こんなふうに兄親子のために瑠樹がひと肌脱ぐことにしたというのも、まだ誰も知らない話であった。