ところで、政略結婚のお相手の釣書が、私のこと嫌いなはずの『元』護衛騎士としか思えないのですが?


「…………は?」

 それは、彼ではなく私の口から漏れ出した音だ。
 かわいすぎる。その笑顔に、王国中の令嬢が恋に落ちるに違いない。

(だ、誰かと私を間違えた?)

 熱があるのだ、その線が濃厚だ。
 そう私は、結論づける。

「あの……」
「どうして……」

 その瞬間、変化したアルベールの表情は、あまりにも切なかったから。
 その時の私は、まだ、アルベールが見せた表情が、三年もの間、私の心を蝕むなんて知らなくて。
 踏み込むべきではなかったのかもしれない。明らかに何かを抱えて訳ありの彼に。

「……アルベール」
「……」

 眠ってしまったのかな? 苦し気な息遣い。
 これだけ高い熱だ、うわ言くらい、誰だって言うよね。

「そう、誰だって……」

 ほんの少しだけ、と言い訳して髪をなでる。
 そして、なぜか私の手に擦り寄ってきて、ふにゃりと笑った顔に息をのむ。
 悪いことをしてしまったように感じて、そっと手を引っ込めようとすると、手を掴まれた。

 起こしちゃった……。

 完全に、眠ってはいなかったらしい。
 うるんで焦点が合っていない瞳が、私を見つめた。
 顔が赤い。本当に熱が高いから、お医者さんに来てもらったほうがいいだろう。

「お医者さん、呼んでくるから」
「――――行かないで」
「え? その……」
「そばにいて欲しい」
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